2016 Fiscal Year Annual Research Report
Fermiology of d-electron mutiband superconductors
Project/Area Number |
26400373
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
寺嶋 太一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (40343834)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フェルミ面 / 量子振動 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドハースファンアルフェン(dHvA)振動などの量子振動測定によるフェルミオロジーは、バルクのフェルミ面を精密に決定できるだけでなく、電子の有効質量m*も求めることができる。この有効質量はバンド質量mbandとm* = mband(1+λ)の関係で結ばれている。従って、量子振動測定は、電子間相互作用、電子格子相互作用等の多体効果の強さ(λ)をバンド(フェルミ面)ごと、あるいは、フェルミ面の部位(オービット)ごとに決定できる。 本研究では、d電子系強結合・多バンド超伝導体のdHvA測定を行い、フェルミ面、電子の有効質量を決定する。これにより、多体効果による質量増強がフェルミ面全体で一様に起きているか、特定のバンドのみで起きているのかを明らかにし、低エネルギーモードの存在の有無、電子状態との関連を議論する。 本年度は、引き続きSrPt3Pについて量子振動測定を行った。米国強磁場研究所の35T磁石でTDO(トンネルダイオード発振器)を用いて、様々な磁場方位について測定を行ったが、従来より観測されている2ヶの低周波数しか見えず、フェルミ面の全貌を明らかにするには至らなかった。 一方、鉄系超伝導体FeSeと同型のFeSについて量子振動測定を開始した。中国南京大学との共同研究で、熱水法によるK0.8Fe1.6S2からのKのデインターカレーションにより得られた単結晶を入手し、物材機構20T磁石、米国強磁場研究所35T磁石で量子振動測定を実施し、5ヶの周波数ブランチを観測した。バンド計算との比較では、一定のバンドエネルギーの調整を行えば、実測のフェルミ面が再現できる可能性が高い。これは、バンド計算が大きく破綻しているFeSeと顕著な対照をなし極めて興味深い。今後更に強磁場の測定でフェルミ面の全体を明らかにする必要がある。
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