2014 Fiscal Year Research-status Report
第一原理GW+BS法を超えた高精度励起状態計算手法の確立を目指した予備的研究
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26400383
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 良史 東京大学, 物性研究所, 助教 (60450293)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 第一原理 / グリーン関数法 / 光吸収スペクトル / 励起子 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき、プロジェクト開始一年目となる本年度は既存の第一原理GW+Bethe-Salpeter法の正当性の確認と幾つかの応用計算から問題点(あるいは適応限界)の洗い出しを行った。具体的には、GW+Bethe-Saleter法を解く際に標準的に使用されているTamm-Dancoff近似の正当性を、少数原子系からなる幾つかの分子へ応用し、他の計算手法や実験値と比較を行いその影響を議論した。その結果はPhysical Review B誌へ投稿しacceptされている。 また本手法を、ホタル生物発光メカニズムの基質であるホタルルシフェリンのUV-vis吸収スペクトル計算や、アセトンや酢酸分子の酸素1s X線吸収スペクトル(XAS)計算へ応用した。全電子混合基底法を用いたGW+Bethe-Salpeter計算はUV-vis吸収スペクトルからXASに至るまで広い範囲の吸収スペクトルを同一のプログラム、計算手法で計算することが出来る。これらの応用計算を通じて本手法の有効性や信頼性を示すことに成功した。特に今回行った第一原理GW+Bethe-Salepter法を用いたXAS計算は世界的に見て初めての試みであり、第一原理計算の新たな可能性を示している。 しかし一方で、XASの実験値との比較では数eV程度の誤差があることが判明し、今後さらなる応用計算を行い問題点を整理していく必要がある。以上の応用計算を行った結果はそれぞれすでにJ. Chem. Phys誌とJ. Chem. Thoer. Compt.誌へ投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、Tamm-Dancoff近似の正当性を小さなサイズの分子に対して系統的に調査した。Tamm-Dancoff近似はこれらの分子に対して非常に有効な近似であることを示すことが出来た。またその結果はすでにPhys. Rev. B誌へ投稿しacceptされている。さらに幾つかの応用計算を通じて既存のGW+Bethe-Salpeter法の計算上の問題点(計算誤差)も明らかにした。これらの結果はJ. Chem. Phys誌とJ. Chem. Theor. Compt.誌へ投稿済みである。以上のことから今年度の研究は、計画書通りに遂行することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降では、本手法を様々な物質へ適応し応用計算を行っていく予定である。特に初年度に開始したXASを中心に計算を行い、本手法の問題点を整理するためにもさらなる研究を行っていく予定である。また手法快活においても研究計画に従い、既存のGW+Bethe-Salpeter法では無視されてしまっている高次の電子ーホール相互作用核の取り扱いを目指し、その定式化やプログラム開発を引き続き行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度投稿した幾つかの論文の査読過程でその対応に予想以上の多くの時間を掛ける必要が生じ、論文の出版が遅れた。そのために当初予定していた幾つかの学会発表を今年度以降に延期させざるを得なかったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画書に示した使用計画に通り、主に全国共同利用スーパーコンピュータの年間使用料、国内外の学会へ出席のための旅費に支出する予定である。それに加え、前年度に延期していた国際会議へ出席をし、発表を行う予定である。
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Research Products
(7 results)