2016 Fiscal Year Research-status Report
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26400385
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 和孝 東京工業大学, 理学院, 助教 (70415214)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 断熱状態 / KdV方程式 / 量子アニーリング / 量子クエンチ / 量子古典対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に3つの内容について進展を得られることができた。 (1). 前年度の研究で動的量子系と可積分系の関係を発見したが、その研究を発展させ、古典系にも同様の性質が適用できることを明らかにした。それによると古典系の解は無分散KdV階層によって網羅的に記述できる。また、Hamilton-Jacobiの理論を用いて断熱状態制御の理論を定式化した。Hamilton-Jacobi方程式は役割に応じて二つに分割される。その過程で定義された一般化作用が断熱不変量と関係することや、量子古典対応において重要な役割を果たすことを明らかにした。 (2). 量子アニーリングの問題への応用を行った。断熱状態の制御理論を平均場多体スピン系の場合に適用し、具体的なプロトコルを"inverse engineering"の方法を用いて求めた。このプロトコルを用いると性能が大幅に改善する。また、量子アニーリングの問題では横磁場項を制御項として用いるが、平面内を回転する横磁場を用いるとより効果的であることを示した。 (3). 量子クエンチの問題について、新しい半古典近似の方法を開発し、動的量子相転移が得られることを明らかにした。従来の半古典近似の方法では量子クエンチの問題を調べることはできなかったが、解の軌道を複素平面にまで仮想的に拡張することによって困難を解消した。横磁場Ising模型に対して開発された手法を適用し、量子クエンチの度合いに応じて動的な特異性(相転移)が得られることを具体的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は3つの方向について進展を得られることができた。 断熱制御の理論を古典系にまで拡張した研究は、日本物理学会の論文誌"Journal of the Physical Society of Japan"に掲載され、注目論文として紹介された。古典力学の問題であるが、量子古典対応の新しい側面が得られたため、今後量子系の研究にも影響を与える成果である。 応用に関しても、近年世界的に研究が盛んになっている量子アニーリングと量子クエンチの問題を扱い、独自の方向から他の方法では得られなかった新しい結果を得ている。 以上のように、基礎・応用のいずれの面についても重要な進展が得られたため、研究は順調に進展していると言ってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、基礎的な問題から具体的な応用までさまざまな方向の研究を進めていく。どちらの面においても重要な進展が得られる可能性があることが、これまでの研究によって見えてきている。残りの年度ではそれらの可能性をさまざまな分野の研究者と協力しながら進めていく。 断熱制御の手法は単純な制御の問題だけではなく基礎的なダイナミクスの問題として見たときに大きな意義をもつ。特に、巨視的な非平衡系への応用を行うことで新しい概念や関係が得られることが示唆されている。古典ダイナミクスの研究で得られた新しい知見を活かして研究を行っていく。 同時に、制御の問題をさまざまな問題に適用していきたい。量子アニーリングのような多体スピン系の問題から少数系の制御問題まで、これまでに議論を行ってきた研究者に引き続き協力を求めながら並行的に研究を進めていく。
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