2014 Fiscal Year Research-status Report
高密剛体球系の時空アンサンブル解析による非平衡相転移と動的協働促進機構の解明
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26400389
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
礒部 雅晴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80359760)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高密剛体球系 / 分子動力学法 / 非平衡相転移 / 動的協働促進機構 / 時空アンサンブル / 国際情報交換 米国 / 国際情報交換 仏国 |
Outline of Annual Research Achievements |
高密分子系における「ガラス転移」、粉体系における「ジャミング転移」、それらの類似性に着目した「遅い緩和」を記述する統一的(普遍的)枠組みに関する研究が近年精力的に行われている。ガラス・粉体系は、非平衡統計力学において線形応答理論を越えた局所非平衡系の統計力学を推進するプロトタイプとして、理論的発展が大きく期待されている。これまで理論・実験・計算機シミュレーションを軸に、相補的かつ多角的観点から問題解決の努力がなされてきているが、決定的な概念や理論は存在せず、未だ多くの研究が絶え間なく創生され、世界中の研究者を魅了し続けている。本研究では、研究代表者の開発した高密剛体球系解析に必要不可欠な新しい方法論を基礎に、近年著しく注目を集めている、ガラス転移の動的協働促進機構(ダイナミック・ファシリテーション)の一般化と時空アンサンブル解析による非平衡相転移の解明を目的としている。 平成26年度は研究計画の初年度で、まず研究遂行に必要な高速計算機環境の整備を行った。また、以下の研究を遂行した。(i) 高密ガラス・ジャミング転移の時空間励起構造の解明を目的とし、まず2成分剛体球ガラス系における拡張(一般化)された動的協働促進理論の研究を行った。特に2成分系の成分比を系統的に変え、過圧縮液体で長時間緩和後も部分結晶化が生じないモデル系の探索ならびに拡張動的協働促進理論を系統的シミュレーションで検証した結果、理論予測をよく再現することがわかった。(ii)3次元剛体球系の転移点近傍で生じる共存相の確認、並びに結晶・融解の動的性質の解明とその起源を探った。特に平衡系で高速計算が実証された「Event-Chain MC」法を用い、非平衡状態から結晶化過程に着目し「Event-Driven MD」法と効率を100万粒子系で系統的シミュレーションにより比較した結果、大規模高密計算での有効性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、4つの研究ステージで構成されている。(A)粉体気体系の後期緩和過程で顕著となる高密クラスター衝突と衝撃波の発生機構を大規模剛体球分子動力学法(Molecular Dynamics:MD)により解明し、従来の理論の修正を行う。(B)2次元剛体球系の融解点近傍での転位の数と分布に着目し、擬2次元、多成分、また密度変化における応答を調べる。(C)3次元剛体球系の転移点近傍の共存相と融解現象を調べ、その動的性質と起源を探る。(D)高密ガラス・ジャミング転移の時空間励起構造の解明を目的として、2成分剛体球ガラス系における拡張された動的協働促進理論と時空アンサンブルによる非平衡相転移の研究を行う。これらの高密系の研究遂行のため、(I)「一般化配向秩序変数と動的多体相関関数法」(II)「Event-Chain MC & Event-Driven MDハイブリッドアルゴリズム」(III)「Transition Path Sampling (TPS)法と時空アンサンブル解析」の3つの新しい方法論を導入し、高密系解析で必要となる方法論を確立する。 平成26年度は、(i)高速計算機環境の構築、(ii) ENS(Paris,仏国)との共同研究として、(C)の高密剛体球系におけるEvent-Chain MC法の緩和、特に結晶化過程での効率と他のアルゴリズムと比較した際の有用性の検証。また、同方法論を用いた剛体球系の共存相での状態方程式(いわゆるAlder転移)の再構成。(iii)U.C.Berkeley(CA,米国)との共同研究として「2次元剛体球系における動的協働促進機構」のシミュレーションによる理論検証。の研究を推進した。平成26年度は、上記の(ii),(iii)に関連し、招待・依頼講演2、国際会議3、国内会議2にて成果を発表した。おおむね当初の計画通り、研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、本プロジェクトの2年目となり、昨年度の研究成果を原著論文にまとめる。今後の研究の推進方策として、4つのステージの内、現在進行中である、(A)粉体気体の後期緩和過程で顕著となる高密クラスター衝突と衝撃波の発生機構を大規模剛体球分子動力学法により解明すること。(B)2次元相転移現象の残された重要な課題として、転位(Dislocation)の生成・ペア乖離の時空分布と共存相の長時間の動的挙動、さらに突然の密度変化に対する相の応答を系統的に調べること。また、(D)ガラス・ジャミング転移の包括的な理解をめざし、「3次元剛体球系における動的協働促進機構」の解明、近年大きな問題となりつつある剛体球極限でのジャミング転移の振る舞いを調べるため、剛体球を使った直接計算による「剛体球系におけるジャミング転移」の解明、などを計画している。それぞれにおいて、原著論文の出版と国内外の学会での発表を行う予定である。
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Research Products
(7 results)