2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400403
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
松川 宏 青山学院大学, 理工学部, 教授 (20192750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 岳人 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10451874)
大槻 道夫 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (30456751)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 摩擦 / トライボロジー / 地震 / 粉体 / バイオリン / 真実接触点 / 有限要素法 / 離散要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,弾性体における前駆滑りと摩擦に関してPMMAを用いた実験を行い、Otsuki, M., & Matsukawa, H. "Systematic Breakdown of Amontons“ Law of Friction for an Elastic Object Locally Obeying Amontons” Law." Scientific Reports, 3(2013)01586、において有限要素法による数値計算および1次元有効モデルに基づく解析計算によって示された新しい摩擦の法則が実験的にも成立することを明らかにした。他の有限要素法、1次元有効モデルによる結果も、実験結果と一致する。 2,一つの真実接触点の摩擦と滑りの機構を、真実接触点の原子モデルの分子動力学法計算により調べ、界面の構造が整合・不整合・ランダムに関わらず、摩擦力に逆らい外力がした仕事は表面エネルギーの増加分に対応すること、従って"真実接触面積"に比例することを示した。 3,マクロ摩擦の有効モデルを構築し、摩擦が荷重に比例するというアモントンの法則が限られた荷重領域では成立するが、より広い荷重領域では荷重とともに減少することを示した。これは1の結果と矛盾しない。 4,塑性変形や凝着、真実接触点間の変形の相関なども取り入れ、限られた荷重領域では一般的にアモントン則が成り立つ事を解析的に示した。これも1,3の結果と矛盾しない。 5,粉体の摩擦実験および離散要素法を用いた数値実験により、スリップサイズの頻度分布が冪乗則に従うこと、その冪の値は、駆動速度、荷重、次元生などに依ることを示した。 6,バイオリンの弦と弓の間の摩擦による弦の運動と発生音を実機の実験によって求めたパラメーターを用いた数値実験により調べ、いわゆる良い音が鳴る条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した本研究の目的は以下のとおりである。 1、解析計算, 数値シミュレーション, 実験を合わせて行い, 現代物質科学・技術の成果をもとに新しい視点から, 様々な分野における多様な系・スケールの摩擦機構の研究を有機的に繋げる。 2,原子・分子スケールから地震にまでおよぶ摩擦現象の階層性を正しく取り込み, 様々な系における摩擦の普遍性と多様性の機構を明かにし, 摩擦の基礎的・統一的描像を確立することを目標とする。 3,その成果を工学上の問題に展開する。 1,2,うちの固体間の乾燥滑り摩擦に関しては極めて順調に進んでいる。原子スケールの単一接触点の摩擦のシミュレーションを行い、そのスケールでの摩擦則を明らかにした。また、メゾスケールでの多真実接触点の系では、単一接触点の分布のため、原子スケールとは異なる摩擦則、すなわち、摩擦が荷重に比例するというアモントンの法則がある荷重領域では極めて一般的に成り立つ事を解析的に示すことに成功した。この結果は我々が構築した摩擦のメゾスケールの有効モデルの数値計算の結果と一致する。さらにマクロなスケールでは、メゾスケールではアモントンの法則が成立しても、駆動力による底面での圧力分布の不均一性のため系全体の滑りの前に局所的前駆滑りが起こり、これにより摩擦係数が荷重の-1/3乗に比例して減少するという新たな摩擦則をこれまでに予言していたが、これを実験的に検証することが出来た。これらの研究により原子スケールから巨視的な系までの摩擦研究をつなぎ、統一的視点を与えることが出来た。 今後、この成果をより多様な条件化での問題に広げるとともに、工学的問題に展開していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画、課題について特に変更は無い。 固体間の原子スケールの単一接触点の摩擦については、計算機実験により定量的な結果を得て実験との比較を行っていく。メゾスケール、巨視的スケールの摩擦現象に関しては、これまでの研究をより広い条件化で行い、実験と比較していく。 また粉体の摩擦も実験、数値実験を進め、定量的比較を行う。さらに解析的理論との比較もおこなう。 潤滑剤を含んだ系においても数値実験を進め、基礎的・統一的描像の構築を図る。
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Causes of Carryover |
2014年度購入予定だった計算サーバが、研究計画のうち弾性体の計算を主に解析的な計算でおこなったこと、潤滑剤の計算にいたらなかったことから購入を遅らせることが可能となった。一方2015年度に国際会議を予定しており、このための海外研究者招聘旅費などののために申請した住友財団助成金が不採択となったことにより、招聘旅費を準備しておく必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最近、上記国際会議を東京大学地震研共同利用研究会として開催できる事が決まったため、海外招聘旅費の多くは地震研より支出できることとなった。繰り越した予算は当初計画通り、計算サーバの購入に当てる計画である。
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