2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400404
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齊藤 圭司 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (90312983)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非平衡統計力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱力学の理解を深化しより現代的なものにすることをめざし、熱機関の研究をした。重要なターゲットは、時間反転対称性をうばったときに従来の熱力学では把握しきれない熱力学的現象についてである。これまで線形応答理論の枠内で、有限仕事率下でのカルノー効率があり得るかどうかという議論をおこなってきた。熱力学第2法則はカルノー効率と有限の仕事率の共存を排除しない。しかしこの共存は直感に反するので、共存を許さない高次のメカニズムが自然界には存在するのではないかと思われる。このような背景の中で、我々は磁場が存在することで初めて生じるネルンスト効果に着目し、統計力学的に厳密な考察を行った。4端子系の電子輸送系を用意し、左右には粒子を通さない熱浴を、上下には電子が行き来できる電子だめを接触させる。磁場がないときには左右に熱流があっても上下に電位が生じないポテンシャル配置を考える。その状況で磁場をいれ、異なる温度の熱浴により有限の熱流が左右方向に生じたときの熱力学的考察をする。上下に生じる電位から、仕事率、および熱力学的効率を計算する。われわれは厳密な効率の上限を導くことに成功し、それはカルノー効率よりもはるかに小さいことが示せた。このことは、ネルンスト効果は効率が悪いというかねてよりある実験的な印象と整合する。 また、低次元系の熱伝導現象も数値的に考察し、界面成長を記述するいわゆるカーダー・パリージ・ザンのメカニズムが異常熱輸送現象に大事になること示した。音波モードと熱モードは非自明に結合しており、その結果熱流ゆらぎのシステムサイズ依存性にも特徴的な性質が生じることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、共同研究という形をとっている。共同研究者の研究進度が非常にはやく、研究はおおむね順調あるいは予想よりも進んでいると言える。今後もこのペースを崩さずにいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、これまでと同様に押し進める。今年度は日本とインドで2つ国際会議を開催するのでその際に集まった広範囲の研究者と議論をし、自身の研究にさらに新しい視野を加味させていきたい。とくに界面成長と熱輸送の関係に関しては、界面成長の専門家との議論を密にする。また熱電効果に関する問題では、熱力学的なエンジンを考察しその熱力学的効率がこれまでに行ってきた効率の限界とどう関係があるかについて、共同研究者との議論を密にとって押し進める。研究連絡には、国外に出て直接的な議論のもとでおこなうものと、スカイプなどをつかってインターネット経由で行うもの2つを使う。このような方法で研究をこれまで以上に迅速に進めていきたい。
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[Journal Article] A Classical Nernst Engine2014
Author(s)
Julian Stark, Kay Brandner, Keiji Saito, Udo Seifert
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 112
Pages: 140601/1-5
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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