2015 Fiscal Year Research-status Report
可積分非平衡統計力学模型による揺動と相関の新理論構築
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26400405
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
香取 眞理 中央大学, 理工学部, 教授 (60202016)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非平衡統計力学 / 可解確率過程 / ランダム行列理論 / 行列式過程 / ダイソン模型 / ベッセル過程 / SLE |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 本研究課題は、研究代表者(香取)が種村秀紀氏(千葉大)らの共同研究者とこの10年来行ってきたランダム行列に関係した多粒子確率過程に対する研究の成果に基づいている。より具体的にいうとこの研究は、粒子間相互作用の強さを表すパラメータであるβの値が2の場合のダイソン模型は、3次元ベッセル過程とよばれる1次元拡散過程を多変数に拡張したものであるとういう対応関係を明らかにし、それによりβ=2ダイソン模型のもつ著しい可解性を導くものである。この可解性をもつ多粒子確率過程を行列式過程とよぶ。他方、2次元上の臨界現象、フラクタル模型、境界共形場理論を統一的に記述する Schramm-Loewner evolution (SLE)は1次元拡散過程であるベッセル過程の複素数拡張とみなすことが出来る。香取はベッセル過程を基礎にして、SLEと行列式過程を統一的に議論してきたが、今年度、それを英文専門書にまとめ Springer 社から出版した。 (2)これまで行列式過程を記述する整関数として多項式と三角関数を用いてきたが、楕円関数を用いたものも構成することを示すことができた。得られた多粒子確率過程は、時間的に非斉次なものであり、非平衡統計力学モデルとして興味深いものであることが分かった。 (3)いくつかの物理現象に対する数理モデル・確率モデルを考案し、それぞれの特性を研究した。具体的には、散逸を伴う砂山モデルの臨界現象、光照射の下での表面加工過程におけるドレスト光子(光子、電子、フォノンの結合状態)の役割をシミュレートする確率モデル、バクテリアの成長と運動の数理モデル化、などを行った。また、ランダム行列の特性関数に関する論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者(香取)は、行列式過程の持つ強い可解性、すなわち時空相関関数が行列式で表されこれらの行列式はすべて相関核とよばれる一つの関数で支配されることに興味を持って研究してきた。この特性をもつ多粒子確率過程を行列式過程と総称する。行列式過程の可解性は行列式マルチンゲールという概念を用いて説明でき、この行列式マルチンゲールの各成分は複素ブラウン運動など基本的なマルチンゲールを共形変換したものとして得られる。したがって、この共形変換を与える解析関数の特定が重要である。これまではこの解析関数として多項式と三角関数を取り扱ってきたが、今回初めて、楕円関数を用いたレベルに拡張することが出来た。研究成果を深めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は、ダイソン模型を例にしていうと、そのパラメータβが2という特別な値をとる場合に関するものであった。この場合、行列式過程としての強い可解性をもつことになる。今後は、βが2以外の場合、あるいは必ずしも完全な行列式過程とはなっていない場合について、研究を発展させていきたい。前者は Edelman-Dumitriu のβアンサンブルの研究、後者は Borodin-Corwin らの Macdonald processes の研究を参考にしたい。
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Causes of Carryover |
年度末である2016年2月29日から3月11日まで米国、Kavli Institute for Theoretical Physics, University of Calfornia, Santa Barbara で開催された滞在型研究集会に参加したが、その旅費支出の詳細調整をしたため、少額の残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品として使用する予定。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] Complex martingales and determinantal processes2016
Author(s)
Makoto Katori
Organizer
New Approaches to Non-equilibrium and Random Systems: KPZ Integrability, Universality, Applications and Experiments
Place of Presentation
Kavli Institute for Theoretical Physics, University of California, Santa Barbara
Year and Date
2016-02-29 – 2016-03-11
Int'l Joint Research / Invited
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