2015 Fiscal Year Research-status Report
力学系理論に基づく多体ダイナミクスの解析と宇宙機のミッションデザインへの応用
Project/Area Number |
26400408
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 浩明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40247234)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙機の軌道設計 / チューブダイナミクス / 力学系理論 / 不変多様体 / 制限3体問題 / 制限4体問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
惑星探査機の軌道設計に関連して,力学系理論を用いて低エネルギーの輸送軌道の設計を行うことが本研究の目的である.本年度は,太陽の摂動下において,地球から月への宇宙機の軌道設計に取り組み,不変多様体の性質を利用したチューブダイナミクスを4体系へ拡張することで軌道設計手法の開発を行った.平成27年度の研究成果について以下に述べる.(1)太陽-地球-月-宇宙機からなる4体系を,太陽からの摂動を有する平面円制限3体系および月からの摂動を有する平面円制限3体系とみなし,それぞれの摂動系にてラグランジュ・コヒーレント構造を用いてチューブを明らかにした.チューブの構造を利用することで,2つの摂動系にて得た軌道を結合させ,制限4体系における軌道設計を行った.また,軌道の結合に際して,燃料消費がゼロとなるような軌道を見つけることに成功した.上記の研究成果として,国内会議にてポスター発表を2件行っている.そのうち1件にて,ベストポスター賞を受賞し研究成果が認められている.また,国際会議にて1件の口頭発表を行い,1件の発表を行っている.(2)これまでの結合平面円制限3体系における軌道設計手法では,宇宙機の出発条件および到着条件を与えた場合,燃料消費の少ない有効な軌道を与えることができなかった.そこで,チューブの構造に基づいて,地球を離れる出発軌道の集合および月へ向かう到着軌道の集合をそれぞれ求め,集合の中から出発軌道と到着軌道が滑らかにつながる軌道を見出し結合させることで,燃料消費の少ない軌道を得ることに成功した.上記の研究成果として,国内会議にて1件,国際会議にて1件の発表を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摂動を考慮した結合3体系の不変構造を考察することによって,従来のチューブダイナミクスの手法を4体系に拡張することに成功した.とりわけ,宇宙機ー太陽ー地球+月摂動系と宇宙機ー地球ー月+太陽摂動系という二つの摂動3体系の繋ぎ合わせにおいて,ゼロマヌーバで軌道を接続できることを示したことは大きな成果である.一方で,火星惑星探査ミッションが有人無人に関わらず宇宙開発の目標の一つとなっているが,地球から火星への軌道設計においては,先述のチューブダイナミクスによる手法では,太陽-地球-探査機系と太陽-火星-探査機系のチューブ同士が極めて遠くに離れて存在し,実用的な軌道の設計が困難になるという問題が確認されている.このようなチューブダイナミクスの利用が困難である地球から火星への軌道設計について調査・研究を深めたい.
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Strategy for Future Research Activity |
4体系のチューブダイナミクスとして,摂動を考慮した結合3体系に基づく宇宙機の設計手法を開発してきたが,この手法をより汎用性のあるものとするために,以下の問題へアプローチする.すなわち, (1)地球低軌道から月低軌道への遷移軌道の最適設計 (2)チューブダイナミクスの適用が困難な火星への軌道設計手法の開発 これらの研究を遂行することにより,本研究のまとめとしたい.
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