2016 Fiscal Year Research-status Report
開放量子系における量子干渉と相互作用の協力現象:多電子散乱状態による解析
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26400409
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
西野 晃徳 神奈川大学, 工学部, 准教授 (00466848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽田野 直道 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70251402)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子ドット / 量子輸送 / 量子干渉 / 開放量子系 / 散乱状態 / 厳密解 / 多体共鳴 / 多体束縛状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
2つの量子ドットを左右の導線に接続した開放型二重量子ドットに対して、多電子散乱状態を相互作用の1次で構成し、これをランダウアー公式の拡張に適用してバイアス電圧下の系に流れる平均電流を解析的に計算しました。 本年度扱った開放型二重量子ドットにおいては、導線における分散関係をフェルミエネルギー付近で線形近似し、各量子ドット上のエネルギー準位は1つとし、電子のスピン自由度は無視して、ドット間クーロン相互作用を考慮しました。また量子ドット-導線間の結合定数は任意の複素数値としました。結合定数の特殊化により、直列・並列・T型などの様々な配置の二重量子ドットが再現されます。 この系に対して、自由電子平面波を入射状態とするN電子散乱状態を相互作用パラメータUの1次で構成しました。ここでNは任意の自然数とします。昨年度得られた2電子・3電子散乱状態と同様に、N電子散乱状態の波動関数は積分等を含まず具体形で与えられます。波動関数のUの1次の項は2体束縛状態に対応し、束縛状態を組む2電子の配置を考慮すると、全ての配置が現れるためには4電子以上の散乱状態を考える必要があることが分かります。 構成したN電子散乱状態を用いて、まず電流演算子の量子力学的期待値を計算しました。ここで散乱状態の規格化因子(ノルム)も相互作用により変更を受けます。次に左右の導線が化学ポテンシャルの異なる電子溜に各々接続していると考えて、電子数Nが無限大の極限(電子溜極限)をとることで、バイアス電圧下の系に流れる平均電流の積分形を得ました。ここでUの0次の項は従来のランダウアー公式で得られる結果を再現します。この積分形により、Uの1次の平均電流が2電子散乱のみにより決まることが示されました。これは相互作用共鳴準位模型でも見られた性質です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画で最も時間がかかることが予想されていた平均電流の解析計算に成功しました。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた平均電流の積分形を(場合によっては数値)評価し、電流電圧特性を調べます。また、くりこみ群の手法により、平均電流の普遍形を導出します。
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Causes of Carryover |
今年度の使用額はほぼ予定通りでしたが、前年度の使用額に未使用額があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と合わせて、出張旅費として使用します。
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Research Products
(9 results)