2014 Fiscal Year Research-status Report
光格子時間変調による極低温原子波束の動的制御と精密計測
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26400416
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
渡辺 信一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (60210902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 賢一 電気通信大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90217670)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 極低温原子波束 / 光格子とトラップ場 |
Outline of Annual Research Achievements |
渡辺は大学院生と協力して、現在までの実験結果を数値シミュレーションによって再現するための数値計算コードの整備と開発を行った。時間に依存するシュレーディンガー方程式を空間DVR法とルンゲクッタ伝播法を組み合わせて直接数値的に解くTDSE法を適用した。また、原子間相互作用を平均場近似レベルで取り込む計算を準備して、相互作用が比較的弱い場合は励起波束が安定することを知った。しかし、現段階では主要な考察を原子間相互作用を無視した1粒子近似の範囲に絞り、実験との比較を実施した。なお、これらの計算にあたっては試行的計算を多数こなす必要があることから、新規に計算機を導入した。 ボゾン系については、数値計算結果からBragg反射によるBloch振動およびバンドギャップ間でのランダウ・ツェーナ遷移が波束の安定性に重要であること、また波束の効率的な励起にはラビ振動を用いた2段階式の励起が有効であることが分かり、学術誌へ投稿し、査読中である。 フェルミオン系については、スピン偏極されていることを最大限に活かした数値模型によって、実験におけるホールの再現に成功した。同時に、ホールの安定性が実験以上に高いことがわかった。そのため、実験における温度依存性やトラップポテンシャルの理想的状態からのずれなどを取り入れた計算を行ったが、ホールの寿命は依然として長いことが分かった。論文執筆の段階に入った。 一方、海外の共同研究者と研究の核心について密接に議論をすることは、大学院生の育成において極めて重要であることから2週間程度のワークショップを実施した。トラップの無い場合についてMathieu方程式を出発点とした時間発展の解析の可能性も吟味した。 中川は光誘起衝突を用いて光トラップ中の原子を制御する技術の開発を前進させた。さらに、光マイクロトラップを用いた原子の捕獲にも成功して、精密計測への応用を視野に研究を展開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論は研究計画に則り、主要な計算をボゾンおよびフェルミオン系の双方に対して実施した。研究は総合的に判断して順調に進展していると思われる。結果をまとめた論文の執筆および投稿もほぼ予定通りである。 実験の進捗も概ね順調で、物理学会で口頭発表を行うに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
フェルミオン系についてのこれまでの結果についての執筆作業を第一に完成させたい。 原子間相互作用を考慮した研究は重要である。その一方でトラップの無い場合についてのMathieu方程式による解析は、振幅変調による波束の生成の場合は前例がないことから、量子論および古典力学の双方の視点から研究することが重要であると判断した。そこで、ラビ振動を利用した2段階励起を対象に、ラビ振動励起の詳細をMathieu方程式に基づく解析的手法で分析したいと考えるに至った。現在、海外の研究者と研究方針について検討中である。 古典位相空間での軌道との関連や安定性を吟味するために、数値計算を並行して実施し、比較検討したいと計画している。 また、バンド間遷移の問題を擬運動量についてのスペクトル解析で表示すると、励起プロセスの詳細を分析できることが分かってきた。この方法の視点から、これまでに得られた結果を分析したいと考える。 実験も同様に、これまでの進捗を踏まえて、展開させていく。
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Research Products
(10 results)