2015 Fiscal Year Research-status Report
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26400422
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中原 幹夫 近畿大学, 理工学部, 教授 (90189019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 耕司 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00425646)
NICCHORMAIC SILE 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 准教授 (10715288)
BUSCH Thomas 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 准教授 (30715272)
大見 哲巨 近畿大学, 理工学部, 研究員 (70025435) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非断熱量子制御 / 冷却原子 / ボース凝縮 / トポロジカル励起 / 光ファイバー / 多体量子系 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
中原はBECにおけるトポロジカル渦生成において,counter-diabatic磁場による非断熱制御を研究し,通常の渦生成に伴う原子のロスを大幅に減らすことに成功した.特に系の固有時間程度で渦を生成したときの残留原子数は,通常の制御に比べほぼ20倍の原子が残留することを示した.この結果のモノポール,スカーミオン,渦ポンプへの応用を研究した.渦ポンプは,トポロジカル渦生成を数回繰り返し高い巻き数の単一渦を生成するものであるが,本研究の成果と光プラグを併用すれば,3,4回のポンプが実行できることを数値的に確認した.2016年2月にWorkshop on Quantum Controlを開催し,分担者や他の科研費の研究者,海外の研究者と議論を行った.丸山は高次元Hilbert空間内の状態に作用する演算子を,制御対象となる部分系との関連で特徴づける研究を行った.直接制御可能な空間Sと,それと強く相互作用する系Eを考え,S上の制御を記述する演算子,S+E上の全系ハミルトニアンから構成される代数構造を解析し,Hilbert空間に自明でない構造が必然的に生まれることを明らかにし,S系が2次元の場合と3次元以上の場合で決定的な違いがあることを見出した.Nic Chormaicは冷却Rb原子雲に埋め込まれた光ナノファイバーを用いて,AT分離やEITなどの量子干渉の実験を行った.EITを用いて原子による完全に光学的なスイッチングを数個の光子レベルで実証した.2016年3月に「量子技術のためのRydberg原子」シンポジウムを開催した.Buschは回転超流体と1粒子制御を研究した.前者ではキック下でAbrikosov格子に密度超格子が現れることを示した.非自明な幾何学下で2成分凝縮体の相分離の量子相転移を通して角運動量の振る舞いを記述し,この相転移は超流動と固体的な回転の転移をもたらすことを示した.後者では,光格子の中にp波状態を生成する方法と,1原子の任意の空間的重ね合わせ状態を非断熱的に生成する方法を研究した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に開始した「BECにおけるトポロジカル渦糸の非断熱的生成」の研究は完成して論文として出版された.研究協力者の大見,Chen,増田, Gungorduも共著者である.平成27年度はその発展として,BECにおける渦ポンプの実現,スカーミオン,モノポールの生成に本研究を応用する研究を開始し,いくつかの成果を得られた.これらの成果のいくつかは論文としてまとめる予定であり,順調に研究が進んでいるといえる.当初はより数学的な研究を目指したが,BECにおけるトポロジカル励起で当初予期しなかった発展があり,平成27年度は研究の軸足がこちらに移った.とくに数値計算が得意なフィンランドのBECグループとの共同研究が始まり,今後も何回かフィンランドを訪問し,研究を進めるめどがついた.2016年2月には,小規模のワークショップを開催し,分担者,丸山,Buschと他の研究者らに,それぞれの最近の研究を発表してもらい,今後の共同研究の可能性を探った. 他の研究として,一般の混合状態をアンシラに使った量子誤り訂正符号の研究を始めたが,いまだケース・スタディの段階で,一般的な解析は研究中である.また,代数学者と球デザインの量子情報への応用に関する共同研究を始めたが,まだオリジナルな研究成果はあがっていない.
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Strategy for Future Research Activity |
BECの渦ポンプに関する数値計算はフィンランドAalto大学の大学院生がほぼ数値計算を終え,実験家の意見を聞いた上で論文にまとめる.磁場で位相を制御してトポロジカル励起を生成するうえで,しばしば非断熱過程が生じるが,そのような過程に本研究の手法が使える状況を解析する.また,フィンランドのBECグループは,アメリカの実験家とも密接な共同研究をしているので,実験家が我々の理論を実証できるよう,より現実的なファクター(例えば重力の効果など)を考慮した数値解析を行う.また,当初の計画に含まれている力学的不変量のリー代数的解析も併せて行う. 一般的な混合状態をアンシラに用いた量子誤り訂正符号は,ケース・スタディが完了したので,それをもとに数学的な枠組みを構築する.また,数学者と協力して,量子状態の数学的記述を研究する. 研究費は,おもに分担者,研究協力者や共同研究者の訪問,または招聘に用いるほか,学会発表のための旅費や数値計算のためのハードウェア,ソフトウェアの整備に用いる.
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Causes of Carryover |
中原は3月にアメリカ物理学会に参加する予定であったが,パスポートにイランのビザがあり,2016年1月から施行された法案(H. R. 158)によりビザなし渡航ができなくなった.入国できない可能性もあるので,今回は参加を見合わせ予定していた旅費を使用できなくなった. Nic Chormaicは招聘研究者が沖縄科学技術大学院大学の宿舎に無料で宿泊できたため,宿泊費の負担が必要なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中原はフィンランドの共同研究者と議論を行うため,何度か訪問や招聘に使用する.Nic Chormaicは平成28年度の分担金とまとめて旅費に使う予定である.
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