2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400423
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
保坂 一元 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 研究グループ長 (50462859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲場 肇 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 研究グループ長 (70356492)
大久保 章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 研究員 (30635800)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光共振器 / 熱雑音 / 周波数安定度 / 狭線幅レーザー / セラミック / 低熱膨張セラミック / 光格子時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、メーカー側と超低熱膨張セラミック製光共振器スペーサーの具体的な製作について議論した。特に、比較的大きな(長い)スペーサーを如何に効率よく製作するかを検討したが、数cm以上の厚みを持つ部品の製作は困難であるという結論に至った。最初に有限要素法を用いて設計したスペーサーは最も厚みのあるところで10 cm以上になるため、根本的な設計変更が必要になった。また、低熱膨張セラミックを用いて長さ50~100 cm程度の比較的大きなスペーサーを製作する場合、形状や製造過程によって大きくコストが変わるので、コストを勘案した現実的な設計が必要になる。超低熱膨張セラミックの利点の一つとして、比較的複雑な形状の部品も製作可能という点があげられるため、ハニカム構造などを参考にし、スペーサーの軽量化も考えた設計を開始している。 光共振器の熱雑音の影響を低減する方法として、本研究テーマでは、超低熱膨張セラミックを用いて長い共振器スペーサーを採用する計画であるが、このスペーサーに半導体薄膜を用いた高反射ミラーを装着する事で、光共振器の熱雑音の影響を更に低減できる可能性がある。半導体薄膜反射膜によって、熱雑音が十分に抑えられるかをテストするため、ULEガラスのスペーサー(長さ12 cm 太さ 6 cm)の両端に半導体薄膜を用いたミラーを装着した光共振器を製作し、この光共振器を用いた安定化レーザーの開発を並行して行う事にした。計算によれば、この光共振器の熱雑音によって制限されるレーザーの周波数安定度は、1.2 E-16となり、既存の光共振器による周波数安定度の1/10以下である。まず、室温より低い温度においても光共振器の温度調整が可能になるようにペルチェ素子を用いて真空槽を冷却する温度調整システムを製作し、+/- 1 mK程度の温度調整が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回使用を検討している超低熱膨張セラミックにおいては、厚さ数cm以上の部品の製作は不可能であるという結論に達したことから、設計の大幅な変更が必要となった。セラミックの厚さの制限を満たし、なおかつ長さ数10 cmの光共振器スペーサーを作製するためには、ハニカム構造の様な複雑な形状となるであろう。その結果、当初の予想よりもコストがかかる事が明らかになり、大きさや長さが制限される可能性がある。 また、有限要素法の計算プログラムの使用に関しては、研究代表者が所属する産業技術総合研究所が保有するソフトウェアライセンスを使用する予定であったが、このサービスが中止となった。このため、本研究計画において当初予定していなかった有限要素法の計算プログラムソフトウェアを購入する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
超低熱膨張セラミックを用いた長い光共振器の実現の為に、ハニカム構造などを用いた現実的な設計を完成させ、これに基づき光共振器を作製する。特に、比較的複雑な構造の部品も製作が可能という、セラミックの長所を生かして、軽量な光共振器の製作を一つの目標とする。 これと並行して、半導体薄膜を用いた高反射ミラーを比較的短いULEガラス製スペーサーに装着した光共振器を用いて、実際に熱雑音による影響が低減できるか検証を進める。将来、超低熱膨張セラミック光共振器スペーサーと半導体薄膜ミラーの組み合わせによって、光共振器の熱雑音により制限されるレーザーの周波数安定度としてE-17台前半が達成できることを証明する。
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Causes of Carryover |
セラミックの製造プロセスにおいて、厚みのある部品の製作は困難であることが明らかになり、設計の変更が必要となった。さらに、当初使用可能であった有限要素法に基づく計算ソフトウェアが使用できなくなり、新しい設計のためには、新たに計算ソフトウェアを購入する事が必要になった。これらの理由で、超低熱膨張セラミック光共振器用スペーサーの購入等を次年度に先延ばしした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題においては、超低熱膨張セラミック光共振器用スペーサーの製作はもっとも重要な部分である。ただし、当初の予想よりもコストが高くなる事が想定されるために、現実的な設計が求められる。一方で、超低熱膨張セラミックの特徴を生かすことのできないサイズになってしまった場合、本研究課題の目的を十分に達成できない。これらの事を勘案し、慎重な設計が必要となる。 また、半導体薄膜ミラーという新しい可能性も探求するために、実際に半導体薄膜ミラーを装着した光共振器を用いてレーザーを安定化させ、周波数安定度を測定する。
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Research Products
(4 results)