2014 Fiscal Year Research-status Report
張力・トルク独立制御型ピンセットの開発による1分子DNAの高次構造の解明
Project/Area Number |
26400426
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
村山 能宏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60334249)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | DNA / 高次構造 / 捩じれ / 張力 / トルク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,1分子DNAの張力とトルクを独立に制御できる装置を開発し,未知の張力,トルク領域におけるDNAの高次構造を解明することである。 平成26年度はおもに装置開発を行い,装置の主要部分となるヘルムホルツ型コイルおよびレーザー光照射部分の光学系を構築した。作成したコイルに交流電流を印加することで,直径3 μmの磁性体ビーズを最大5 Hz程度で回転可能であることを確認した。また,本装置のもう一つの主要部分となるレーザー光照射部分の光学系を構築し,レーザー光の輻射圧を用いて磁性体ビーズに力を加えることが可能であることを確認した。ビーズ像の位置検出精度および力算出時の誤差を見積もった結果,0.3 pN の力を印加した場合 0.02 pN の精度で力の変化を測定できることが分かった。なお,ビーズの位置算出における相対誤差は2.8 % であり,末端間距離 1 μmのDNAにおいて28 nm の変位を測定可能である。 研究当初に予定していた初年度の装置開発はほぼ完了したため,実際にDNA試料を用いてDNAの捩じれ応答(DNAの捩じれ回数とDNA末端間距離の関係)を測定した。その結果,本装置を用いてDNAの張力とトルクを独立に制御可能であることを確認するとともに,高次構造変化に起因した特異な捩じれ応答を測定することに成功した。 また,DNAの構造揺らぎがDNA上の微粒子の運動に影響を及ぼすことや,核内のような高濃度DNA溶液中では濃度に依存して微粒子の拡散の仕方が変化することを示唆する知見を得ることにも成功した。これらの結果は,核内におけるDNAの高次構造と遺伝子発現の関係を明らかにするための重要な知見と考えられる。 以上の成果に関して,計2回の国際会議発表および計3回の国内学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画時に予定していた初年度の装置開発をほぼ完了し,開発中に直面したビーズの回転判定の問題についても,画像解析プログラムを開発することで克服することができた。開発した装置を用いることで,従来型の磁気ピンセットでは困難であった連続的なDNAの捩じれ応答を測定することにも成功している。以上のことから,当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した装置が十分に機能することが確認できたため,安定かつ効率的な測定を実現するための装置改良を行う。計画時には位置検出精度を10 nm 程度まで向上させることを目標としていたが,現状の位置検出精度でも高次構造変化に起因した捩じれ応答を測定できていることから,測定の効率化に重点を置く。具体的には,コイルの固定方法および電流供給回路を変更することで,データ取得効率を向上させる。平成27年度の前半でこれらの改良を終了し,平成27年度後半以降は,未知の張力,トルク領域におけるDNAの捩じれ応答の取得を試みる。特に捩じれ速度と捩じれ応答の関係に着目することで,捩じれに起因したDNAの高次構造変化に特徴的な時間を実験的に明らかにする。 また上述の実験と並行して,DNAの高次構造と遺伝子発現の関係を明らかにするために重要となるDNAの構造揺らぎがDNA上の微粒子の運動に及ぼす影響や,DNA溶液中の拡散現象について,平成26年度に得られた示唆を定量的に検証するための実験を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進展に伴い研究遂行に不可欠な消耗品の購入費が不足したため,平成26年度途中に前倒し支払請求(直接経費:20万円)を行った。これらの消耗品の購入は請求額を下回る支出で済んだため,記載額(1,494円)の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬品やプラスチック器具などの消耗品購入のために使用する。
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Research Products
(5 results)