2015 Fiscal Year Research-status Report
張力・トルク独立制御型ピンセットの開発による1分子DNAの高次構造の解明
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26400426
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
村山 能宏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60334249)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | DNA / 高次構造 / 捩じれ / 張力 / トルク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,1分子DNAの張力とトルクを独立に制御できる装置を開発し,未知の張力,トルク領域におけるDNAの高次構造を解明することである。 平成27年度は前年度に開発した装置を用いて,1分子DNAの捩じれ応答(DNAの捩じれ回数とDNA末端間距離の関係)を測定した。捩じれ速度を0.3 Hz,1 Hz,3 Hzと変化させたところ,捩じれ速度が速いほど伸長率の変化量が大きいことから,高速で捩じることで急激な高次構造変化が生じやすくなることがわかった。また,DNAの二重螺旋の向きに対し正方向に捩じった場合と負方向に捩じった場合で,伸長率の変化に明確な履歴が生じる場合があることがわかった。これらの結果は,DNA鎖にトルクが蓄積され超螺旋構造が形成されるまでに特徴的な時間が存在することを示唆しており,1分子DNA上のどの位置に,どのタイミングで高次構造が形成されるのかを知る手がかりになると考えられる。 また上述の実験と並行して,DNAの構造揺らぎがDNA上の微粒子の運動に及ぼす影響について調べた結果,微粒子は熱運動による構造揺らぎが最も大きい位置に集まりやすいことを示唆する知見が得られた。さらに,核内のような高濃度DNA溶液中における微粒子の拡散現象について調べた結果,DNA濃度の増加にともない粘性に加え,弾性の寄与が顕著に現れることを見出した。後者の実験では前年度に開発した画像解析手法を利用しており,Review of Scientific Instruments 誌にその成果を発表した。これらの結果は,核内におけるDNAの高次構造と遺伝子発現の関係を明らかにするための重要な知見と考えられる。 以上の成果に関して,計2回の国際会議発表および計3回の国内学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度にコイルの固定方法の改善および電流供給回路の改善を行い,装置開発は完了した。開発した装置を用いて1分子DNAの捩じれ応答を測定した結果,DNAの構造変化のようすが捩じれ速度に依存することが確認できている。これらの成果に加え,DNAの構造揺らぎとDNA上の微粒子の運動との関係に関する知見やDNA溶液中における微粒子の拡散運動に関して新規な知見が得られていることから,当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
装置開発は完了したため,未知の張力,トルク領域におけるDNAの捩じれ応答の取得を試みる。これまでに得られた結果から,超螺旋構造の形成および崩壊過程には特徴的な時間が存在すると考えられる。このことを明らかにするため,二本鎖DNAの片側に切れ込み(ニック)を入れたDNA試料を用いて実験を行う。通常DNAにニックが存在する場合,トルクが蓄積されないため超螺旋は形成されないが,トルクの緩和時間よりも速い速度で捩じることにより,ニックが存在するDNAに対しても超螺旋が形成されると考えられる。捩じれ速度を系統的に変化させ超螺旋の形成,崩壊過程を観測することにより,これらの過程に特徴的な時間を明らかにする。 また上述の実験と並行して,DNA溶液中の微粒子の拡散現象について,平成27年度に得られた知見に基づき,DNA溶液内に生じる弾性の要因を明らかするための測定も継続する。
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Causes of Carryover |
実験直前に購入することが望まれる試薬の購入を2016年3月から2016年4月にずらしたため,記載額(43,700円)の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として計上し,研究の遂行に不可欠な試薬やプラスチック器具類の購入のために使用する。
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Research Products
(8 results)