2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400432
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉岡 伸也 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (90324863)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 構造色 / フォトニック結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫や鳥にはサブミクロンサイズの微細構造を利用して鮮やかな色を生み出している種類が数多くいる。構造色と呼ばれるその色の仕組みは、例えばフォトニック結晶のように、微細構造が周期的である場合 には分かりやすい。周期的な構造から反射される光は、特定の波長で強め合う干渉を起こすので、波長選択的に反射率が上昇するからである。しかし、自然界の生物が利用する微細構造は単純なものばかりではない。いくつかのチョウが利用するフォトニック結晶は、最大 10 ミクロン程度の大きさに分かれたドメイン構造を持ち、各ドメインは異なる結晶配向を持っている。本研究はそのような結晶配向の分布と発色の関係性を調べている。 本年度は主としてマエモンジャコウアゲハ(Parides sesostris)に注目した研究を行った。このチョウに関しては複数のドメインに分かれたフォトニック結晶が、鱗粉面の垂直方向には同じ結晶方位を持ち、一様な色を生み出していることが指摘されている。一方、入射偏光と観察光の偏光を直交した偏光配置で顕微鏡観察を行うと、各ドメインは異なる色と明るさを持ち、ステンドグラスのように観察される。このような偏光性を説明するために、フォトニック結晶構造を計算機中に再現し反射率の理論計算を行った。 フォトニック結晶構造はジャイロイド型の構造であることが知られている。その結晶の[110]方向から光を入射し、偏光が90度回転して反射される光のスペクトルを計算した。その結果、入射偏光と結晶軸との角度に依存して、反射率が大きく変化することが分かり、顕微鏡で観察されたステンドグラス状の模様を矛盾なく再現することがわかった。また、そのことを実験的にも検証した。一方、結晶ドメイン間のクロストークの存在の有無や鱗粉上層部に残されたハニカムと呼ばれる構造の光学的な働きについては今後の課題として残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マエモンジャコウアゲハはフォトニック結晶を持つチョウの代表例として知られ、発色の仕組みを取り扱った論文が数多く発表されている。しかし鱗粉が持つ美しいステンドグラス状の模様は今まで説明されてこなかった。今年度の研究でその模様が初めて理論的・実験的に説明できたことは大きな成果であると言え、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
チョウと並んでフォトニック結晶が数多く発見されているゾウムシに注目し、研究を進展する。ゾウムシの鱗片においてもフォトニック結晶構造が複数のドメインに分かれていることが報告されており、結晶構造はダイヤモンド型であると言われている。まずはそのことを確認することから出発し、偏光特性・配向特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度はチョウの鱗粉のフォトニック結晶に関する理論的研究を中心に取り組んだため、実験に用いる消耗品などが計画よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ゾウムシの鱗片が持つフォトニック結晶に関する微細構造観察、分光実験を行い、配向特性と光学特性の関係を理論的に説明する。
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Research Products
(6 results)