2014 Fiscal Year Research-status Report
電解質溶液の非平衡ダイナミクスにおけるイオン個別の効果の研究
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26400433
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
名嘉山 祥也 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10422982)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電解質溶液 / 電気二重層 / 対イオン飽和 / 微分静電容量 / 電気浸透流 |
Outline of Annual Research Achievements |
一成分溶媒(水溶液)についてイオン個別性の効果の基礎的理解を得た.イオン個別性の効果を考慮した自由エネルギー汎関数を用いて,低表面電位から高表面電位,また低塩濃度から高塩濃度における電気二重層の構造を解明した. イオンによって異なる溶媒和の効果を自由エネルギー汎関数に考慮した.溶媒和したイオンによって,排除体積効果と溶液の誘電率減少という2 つの効果が生じる.これら2 つの効果は,イオン濃度が高くなるほど顕著になり,それぞれ独立な機構によってイオン濃度の上限を制限することがわかった(2つの対イオン飽和機構).排除体積と誘電率減少はイオンによって異なるため,対イオン飽和がどちらの機構で生じるかは,イオンによって異なる.この判定基準を理論的に導出した.対イオン飽和により電気二重層の微分静電容量は,表面電位に対してピークを示す.本研究で用いた自由エネルギーによりこの現象の仕組みが半定量的に解明された.さらに,非線形な誘電率減少関数を考慮した上での接触値定理と微分静電容量の解析的な表現を導出した.以上によって,電気二重層の微分静電容量の実験データと対イオン飽和および溶媒和イオンの効果の関係が明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26 年度の研究計画を実施し,研究論文を学術雑誌に掲載した.また,これについて10 件の学会発表を行ない,一定の進展を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
一成分溶媒(水溶液)についてイオン個別性の効果の基礎的理解を確立する.前年度の検討に基づき,ナノ流路内の輸送現象について検討する.流路内の電解質溶液の流れである界面動電現象について,イオン個別性の効果を明らかににする.界面動電現象において考えられるイオン個別の効果は主に3 つある. 1 つは誘電率変化と有限サイズ効果と価数によって電気二重層の長さスケールが変わることによる効果である.電気二重層の長さスケールと流路サイズの比に注目して,イオン種による電気浸透流および流動電流を明らかにする.また,ナノ流路や高分子多孔膜における実験データと比較することにより,理論の適用性を検討する. 2 つ目はイオンの濃度が高いことによる粘度変化の効果であり,3 つ目は誘電率が変化することによる誘電摩擦の効果である.イオンによる粘度変化は,電気浸透流や表面伝導度に直接影響し,また誘電摩擦によりイオンの拡散係数が変化する.したがって,これらが非平衡ダイナミクスに与える影響は重要と考えられるが,実験的な報告はほとんどない. 本課題では,これらの効果を考慮した解析により界面動電現象への効果を洞察する.
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Causes of Carryover |
国外の研究共著者を招いて研究打ち合わせした際の旅費支出が,予定よりおさえられたため,その余剰分が次年度使用額となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度として請求した分は当初計画に沿って使用する.次年度使用額となった分は,国際会議への旅費に使用する.
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