2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400439
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
小林 敬道 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (20260028)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 衝撃圧縮 / 衝撃波誘起発光 / 粉末物質 / ルミネッセンス |
Outline of Annual Research Achievements |
粉末物質の衝撃波誘起発光(ルミネッセンス)現象の解明に取り組んだ。用いた試料は粉末蛍光体としてよく知られるCeドープのYAG粉末である。昨年度はまず粉末物質の基本的な衝撃特性を押さえることに重点を置き、高圧縮性粉末物質の特異な衝撃圧縮挙動を明らかにした。今年度はその衝撃波誘起発光現象の解明に取り組んだ。この物質は衝撃波により励起され可視領域に強い発光をしめすが、通常の発光(ルミネッセンス)スペクトルとは大きく異なることを我々は既に発見していた。衝撃波により誘起される新奇発光現象であり、これまでに報告例のない発光現象である。衝撃波と物質との相互作用に関する重要な知見を与えると考えられることから、その発光メカニズム解明のための挑戦に着手した。衝撃波誘起スペクトル、フォトルミネッセンススペクトル、励起スペクトルなどを詳細に調べた結果、Ce:YAG粉末の衝撃波誘起発光には通常の蛍光スペクトル等には表れない高電子励起状態からの発光が強く出ていることを突き止めた。これにより衝撃波誘起発光が通常のフォトルミネッセンスなどの発光とは異なる原因を明らかにし、その発光の起因する電子状態間の遷移も特定し、発光メカニズム解明を大きく進展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝撃波誘起発光が特殊な発光を示す原因を明らかにした。これは相当する電子遷移を特定することに成功したからである。これにより発光メカニズム解明に向けた大きな進展を遂げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
フォトルミネッセンスなどの通常の発光には現れない電子状態間の遷移が、何故、衝撃波誘起発光に現れるのか。これは励起のメカニズムとも深くかかわる可能性があり、発光メカニズムを完全に理解するには必要な知見である。更には、物質と衝撃波との相互作用をより深く理解するための重要な基礎研究につながるといえる。これまでに明らかにした粉末物質の特異な衝撃特性を考慮しつつ、励起メカニズムの理解に向けて今後の研究を進める。
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Causes of Carryover |
年度後半は前半までに蓄積したデータのまとめ作業に重点をおいたため実験回数が予定より大幅に少なかった。加えて、購入予定だった測定装置を次年度にまわしたことも影響した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度購入できなかった測定装置を次年度購入予定。
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