2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400442
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日置 幸介 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30280564)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地震予知 / 短期予知 / 電離圏全電子数 / 衛星測位システム / 電離圏擾乱 / 地磁気変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
全球航法衛星システム(GNSS)の受信機を用いると、超高層大気である電離圏の電子をカウントすることができる。地震の直前に起こると考えられる電離圏全電子数(TEC)の上昇について、平成26年度はいくつかの重要な進展をみた。一つはHeki [2011]で用いた斜めTECの鉛直TECへの変換である。この変換には受信機内部および衛星内部の周波数間バイアス(IFB)が必要となるが、変換によって、衛星の動きによるU字型の見かけの変化を取り除くことができ、直観的な理解が可能になる。当該年度は衛星IFBおよび受信機IFBを独自で決定する手法を開拓し、それによって過去に地震前TEC上昇が見られたモーメントマグニチュード8.2から9.2の規模を持つ全ての大地震で鉛直TECへの変換に成功した。二つ目として2014年4月にチリ北部で発生したM8.2の地震前に顕著な電子数の増加が見られ、8例目のデータが揃ったことが挙げられる。三つ目として、Heki [2011], Heki & Enomoto [2013]に対する反論論文(Comment)が東大地震研究所グループからJGR誌に発表されたが[Utada & Shimizu, 2014]、それに対抗するReplyの論文を同じ雑誌にHeki & Enomoto [2014]として出版した。その中でTEC変化と同時に発生した地磁気の変化について、磁気嵐による変動であるとする反論論文に対して、それを否定する証拠を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
周波数間バイアスの推定は一般的に高度なアルゴリズム(電離圏モデルと同時に推定する)が必要とされるが、研究代表者は夜間のTEC変動を細小にするという簡易な手法を応用することで、同じ程度の確度でバイアスを求めるソフトウェアを完成させた。これによって次年度の作業を一部先取りして行うこともできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度の大きな目標は、従来の目視ではなく計算機内部のアルゴリズムで地震前の異常を自動的に検知するシステムを開発することである。この準備段階として既に鉛直TECへの変換が終わっており、今年度は情報量基準を用いた統計的手法を駆使してTECの変化率の急増をリアルタイムで自動的に判定できる信頼性の高い手法を見いだすことを今年度の推進方策と考えている。すでに前年度末から赤池情報量基準(AIC)を用いた曲線の折れ曲がり検出のアルゴリズムのプログラム化を進めており、ある程度の見通しを得るところまで来ている。
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