2015 Fiscal Year Research-status Report
応力状態変化に伴う地殻深部速度構造の時間変化の検出
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26400446
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 俊博 東京大学, 地震研究所, 助教 (10334286)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地球内部構造 / レシーバ関数 / 相似地震 / 時間変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に引き続き、グローバル地震カタログに掲載された、世界各地で発生した中規模地震の地震波形記録を蓄積し、そのデータを用いて、日本列島域で観測される相似地震データベースの構築を行った。 相似地震の検出は、その探索範囲を全世界に、探索期間を1989年9月から2016年2月まで広げて実施した。その結果、波形の相似性が非常に高い地震群は、アリューシャン列島からマリアナ諸島までの太平洋プレート沈み込み帯や、インドネシアからフィジーまでのインド-オーストラリアプレート沈み込み帯などの様々な地域で多数検出することができた。トンガ周辺の深発地震発生域では、年に数回、比較的波形の似ている地震が発生していた。これらのデータは、地震波速度構造変化の時間分解能を向上させる有用な情報となりうる。 レシーバ関数による地震波速度構造の解析は、地殻深部における地震波速度構造の時間変化を調べるための手法を検討した。各観測点下の標準的な地殻・最上部マントルの地震波速度構造及び地震波速度不連続面の深さは、全期間のデータを用いて推定している。そのうち、モホ面の深さが解析期間内では変化しないことを拘束条件として取り入れることにより、推定パラメータの数を減らすことを可能にした。地震波速度構造の変化は、2011年東北地方太平洋沖地震の発生時刻をまたいで発生した相似地震群を、地震発生前と発生後に分けて処理することにより推定した。その結果、震源域の西側に位置する東北地方の内陸部で地殻内速度の低下が示唆された。本解析結果の安定性についてはまだ議論の余地があるものの、速度低下域の分布は、GPSデータ解析から推定されたひずみ変化の分布と類似した傾向を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相似地震の検出は、全世界で発生し、日本列島域で観測されたほぼ全ての地震に対して行うことが可能となったため、相似地震データベースの構築が順調に進んでいる。レシーバ関数解析は、地殻・最上部マントルの地震波速度構造及び地震波速度不連続面が推定され、そのおおまかな時間変化を調べることも可能となりつつある。任意の時間を境とした、より詳細な構造変化を推定するには、個々のレシーバ関数をより安定に計算する手法について、更に検討を進める必要があるものの、大規模な速度変化が想定される場所、時間が特定できれば、レシーバ関数をスタックした情報からでもある程度変化が推定できることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画した通りに研究を進める予定である。日本列島域で観測される世界各地で発生した中規模地震波形記録の蓄積は継続して実施し、相似地震データベースの構築を行う。地震波速度構造の時間変化をより詳細に調べるため、レシーバ関数の計算手法を比較検討し、改善を行う。各相似地震群から任意の期間の速度構造変化を推定する手法を開発する。さらに、複数の相似地震群の情報を重ね合わせて、地震波速度が変化した時間や領域が特定できるか推定を試みる。本研究で得られた相似地震の情報及び速度構造変化に関する成果は、わかりやすく加工してホームページ上に公開する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、現在の研究進行状況を踏まえ、論文を執筆する前に、次年度4月に開催される国際学会へ参加し、発表する予定を新たに加えたこと、昨年度数回参加した国際学会での発表を、英文校閲をすることなく行えたために謝金が発生しなかったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画としては、4月に参加を予定している国際学会に参加するための旅費及び論文を執筆した際の英文校閲費用への使用、データ量増加及び論文執筆を効率化するための物品費の増額に充てることを計画している。
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Research Products
(6 results)