2015 Fiscal Year Research-status Report
衛星重力・高度計、地上データを用いたエンダービーランドでの南極氷床変動の追跡
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26400453
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福田 洋一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30133854)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 衛星重力 / 衛星高度計 / 氷床変動 / 重力異常 / 基盤地形 / GIA / エンダービーランド / 東南極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、衛星重力データおよび衛星高度計データに、大気気候モデルや地上での測地・地形・雪氷データなどを組み合わせることにより、東南極・エンダービーランドでの流域スケールの氷床質量変動を高分解能で捉えるとともに、地上でのGNSSや重力データなども用いることで、氷床変動がどのように起こっているかを明らかにすることを目的としている。 一般に、南極氷床の質量収支の研究で用いられる衛星重力データについてはGIAモデル補正に関する曖昧さ、衛星高度計データについては表層の積雪やフィルンの密度に関する曖昧さ、また、気候モデルについてもキャリブレーションに関する曖昧さなどがあるため、これらのデータを組み合わせることで、その曖昧さを減らすとともに、定量的な精度見積を与えることが重要である。そこで、今年度の研究では、GRACE衛星重力データによる氷床質量変動、Envisat高度計による氷床高度、RACMO2モデルによる表面質量収支データを組み合わせることで、白瀬氷河流域での質量収支について、定量的な検討を行った。具体的には、それぞれのデータを用いた最近の質量変動トレンドを求めるとともに、白瀬氷河流域で特に急激な質量増加が指摘されている2008-2010年の期間について、GRACEの質量変動トレンドを説明しうる高度計データとモデルデータの変動幅について検討を行った。その結果、3者のデータは基本的に整合しており、現実的に考えうる表層の積雪層とフィルン層の平均的な厚さ変化の範囲で、これらのデータを矛盾なく説明できることが判明した。 また、これらの変動の詳細を探るため、昨年度に引き続き、衛星高度計による空間的に高分解能な高さ変動データと、氷床表面地形や風系との関連などについても検討を行っており、今後、地上データとの比較も試みながら、より詳細な解析を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GRACEデータ、衛星高度計データ、RACMO2モデルについては、これらのデータを組み合わせることにより、白瀬氷河流域地域での急激な質量増加や質量変動トレンドを量的に矛盾なく説明できる結果を得ており、これらの内容について、地球惑星科学連合や日本測地学会など国内での学会発表に加え、チェコで開催される2015年国際測地学・地球物理学連合(IUGG)総会や2015年米地球物理学連合(AGU)秋期大会でも発表を行い、現在、論文執筆中である。今後、地上データとの比較研究などをより推進する必要があるが、得られた結果は重要な新しい知見を含んだものであり、全体として、概ね順調な達成状況であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で、衛星重力データ、衛星高度計データ、気候モデルを利用し、やや広域な白瀬流域レベルでの質量収支については、概ね矛盾なく説明できることが示された。一方、これまでの高度計データの解析から、氷床高度変化の大きな地点が偏在しているらしいことも示されており、今後は、これらの成果を踏まえ、質量変動のメカニズム解明を目指したより詳細な空間変動パターンの解析を中心に実施する。このため、ICESatの高度計データを用いることでEnvisat衛星高度計データの定量的なキャリブレーションを行いながら、白瀬氷河流域や昭和基地周辺での高度変動の大きな地点の抽出を行い、可能であればSAR画像や他のリモートセンシング画像との比較も行いながら、その地理的、地形的特徴についての検討を行う。さらに、連携研究者や関連研究者の協力を得ながら、雪尺観測データなど地上での雪氷観測データとの比較、昭和基地周辺での重力変化、位置変化データとの比較についても検討する。 来年度は、最終年度にあたるため、これらの研究を推進するとともに、これまでに得られた成果について、様々な角度から再検討を行う。また、国内外での情報収集に努めるとともに、連携研究者や研究協力者とより緊密な研究打合せを行いながら、得られた成果の発表や論文執筆を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は、初年度の研究の延長として、衛星データ処理やモデルデータとの比較を中心に、白瀬氷河周辺での質量収支の見積もりを実施した。これらの成果については、2つの国際会議を含む国内外での学会での発表を実施しており、概ね順調な進捗状況である。一方、昭和基地での現場観測データや雪尺等の地表データ利用について、連携研究者や研究協力者が南極観測に参加したなどの事情で、やや遅れており、このための研究打合せ、資料収集等を主に次年度に実施することとした。 これらの変更に伴い、国内での連携研究者、研究協力者との打合せに関する国内旅費、資料整理謝金、関連経費の支出を次年度以降に延期したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由のとおり、特に氷床変動に関連した地表データの利用に関して、連携研究者や研究協力者との研究打ち合わせ、資料収集等をより活発に行う。また、これまでに得られた結果についての成果公表と、その内容や位置付けの再検討を行うため、国内外での学会・研究会等に積極的に参加する。特に、外国での学会等に積極的に出席し、成果の報告と同時に、衛星関連など最新の情報収集に努め、最終年度の成果のまとめに活用する。 本年度の研究費は、基本的に、これらの会議出席、打合せ等の旅費、データ整理等の謝金、会議の参加料、論文投稿料等に使用する。
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Research Products
(7 results)