2014 Fiscal Year Research-status Report
宇宙測地技術による飛騨山脈周辺の地殻変動様式の解明
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26400454
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 陽一郎 京都大学, 防災研究所, 助教 (80466458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷺谷 威 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50362299)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GPS観測 / InSAR解析 / ALOS2 / 飛騨山脈 / 跡津川断層 / 糸魚川-静岡構造線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まずGPS観測点の整備を行った。具体的には、飛騨山脈に隣接する跡津川断層近傍にある5観測点で、古い受信機が頻繁に欠測をおこしていたため、受信機とアンテナをより新しい物に交換した。また、新たに3つの観測点に受信機とアンテナを設置して観測を開始した。これらの観測点はいずれも東北沖地震の前に観測を行っていた点であるため、今後の観測結果と比較することで東北沖地震の影響を見積もることができる。以上に加えて、他の研究費も併用しながら阿寺断層周辺と糸魚川-静岡構造線の周囲に観測点を新たに設置して観測を開始した。現在データ解析を進めつつある。また、多くの観測点にモバイル通信機器を設置して、毎日一回大学へデータ転送するように改良した。これにより、観測機器の不調に直ちに対応することができ、また問題の無い観測点にメンテナンスに行く必要が無くなった。 本年度は、2006年から2011年まで運用されていた人工衛星「だいち」(ALOS)が撮像した合成開口レーダー画像を用いてInSAR時系列解析を行い、東北沖地震前の跡津川断層から飛騨山脈を挟んで糸魚川-静岡構造線に及ぶ領域の地震間地殻変動の検出を試みた。GPSデータを用いないでInSAR解析を行った結果、長波長の位相トレンドが地殻変動を殆ど覆い隠してしまった。そこで、GPS観測データから求めた平均速度場を用いてInSAR時系列解析の結果得られた面的な平均速度場から長波長トレンドを除去し、さらに綿密な地形補正を行った結果、極めて詳細かつ面的な地震間地殻変動速度場を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの観測点は順調に稼働しており、データ解析を進めることにより各観測点の正確な座標値や精密な地殻変動速度が今年度の前半には得られる。後半にはInSAR解析のために提供可能である。また、通信についても現在のところ問題は無く、多くの点からほぼ欠測無くデータを取得できている。InSAR解析についても、電離層による擾乱や積雪による干渉性の低下が酷い画像を除いてもなお有効な画像が多くあり、これらを用いて時系列解析を行うことで東北沖地震前の地震間地殻変動を求めることに成功した。GPS速度場によるInSARデータの補正も、スプライン関数を用いることでうまくいった。この際に、地形補正と位相ランプの除去を同時に行った後でいったん位相ランプ成分を戻し、その後でGPSデータを用いて長波長トレンドを除去するという手順を踏むと、地形の効果をより良く補正できることも明らかになった。人工衛星「だいち」の後継機「だいち2号」(ALOS2)は昨年5月に打ち上げられ、11月から順調にデータの定常配信を行っており、緊急観測などで既に成果を挙げている。 一方、昨冬は飛騨地方で雪が多かったために一部の観測点で整備が間に合わなかったことが問題として挙げられる。また、ALOS2がまだ定常的な運用に移行していないために撮像域を絞りこみにくく、それをGPS観測点の分布に反映させることが難しかった点も課題として残る。InSAR解析ソフトウェアがALOS2のデータに対応するのが若干遅れているが、これは平成27年度中には必ず解決されるので、あまり大きな問題ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
年度の前半でGPSデータ解析を進めて、精密な座標値を揃える。また、昨年度は観測点準備が間に合わなかった点を可能な限り早く訪れ、モバイル端末を用いた通信機器を設置する。さらに、昨冬の大雪でダメージを受けた観測点があった場合、速やかにこれを回復する。本年度はALOS2のデータはあまり蓄積していないので、東北沖地震後の地殻変動については予定どおりGPSデータだけを用いた解析も行う。この際に、火山である立山周辺の東北沖地震前後の地殻変動に特別な注意を払う。 InSAR解析の面では、まず東北沖地震以前の面的速度場について改良を行う。昨年度はInSAR時系列解析で得られた平均速度場をGPSデータで補正していたが、各干渉画像をGPSデータで補正した後で時系列解析を行うことで一層のノイズ軽減を試みる。この解析の結果、変位勾配の顕著な集中を確認した場合には、その地域でGPSキャンペーン観測を実施する。またALOS2のデータを用いて飛騨地域での干渉画像を作成する。これについては干渉ペアがまだ少ないので、今年度は複数干渉画像のスタッキングとGPSデータによる補正を通してノイズ軽減を試みる。加えて、昨年発生した長野県神城断層地震や本年4月にネパールで発生したMw7.8の地震など山岳地域で発生する地震のInSAR解析を積極的に行い、ALOS2データの立体視差補正や地形補正に関するノウハウを蓄積する。さらに、欧州のC-band衛星Envisat, ERS, Sentinel-1やX-band衛星Terra-SAR Xのデータも積極的に利用する。
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Causes of Carryover |
昨年の冬は飛騨地方で記録的な積雪があり観測点整備に若干の遅れが出たため、GPS受信機一式の購入を先に延ばした。また、北海道大学への異動が決まったため、今後の旅費の増大を見込んで、経費使用をやや控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
B-Aが発生した理由は、上述の通りGPS受信機一式の購入を先に延ばしたことによる。本年度の早い時期にGPS観測点の整備を完成させ、GPS受信機一式を購入して設置するというのが基本方針である。北海道から中部地域へ出張することになるため、旅費が増大することが予想される。一方で、昨冬の大雪により観測点が破壊されていた場合には、これを復旧させることに優先的に費用を充てる。
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Research Products
(6 results)