2015 Fiscal Year Research-status Report
リモートセンシングデータ解析による月と火星の地下溶岩チューブ存否検証・分布調査
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26400459
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
春山 純一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (40373443)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 月 / 火星 / 縦孔 / 地下空洞 / 探査 / 溶岩チューブ / SELENE / かぐや |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成27年度)は、昨年度に引き続き月や火星で見つかっている縦孔構造を「かぐや」「LRO」「MRO」等の画像データによって、地下空洞存否の検証を行った。また、計画に先行して、縦孔形成についての研究も進めた。 本年度は、死の湖ならびに虹の入り江の陥没地形周りについて、マルチバンドイメージャ分光データを用いて、地質分類を行った上で、年代決定の詳細化を行った。これら陥没地形は縦孔とはなっていないが地下空洞構造上に出来たと思われる地形的特徴を備えている。加えて中緯度に存在し、熱的に探査をしやすい環境にある。調査の結果、死の湖の陥没地形の周辺領域は、複数回の溶岩噴出が認められること、虹の入り江の陥没地形よりも直径100―500 mのクレータの個数密度が低くなっていること、直径500 m以上のクレータの個数密度が高いことなどがわかった。こうした結果は、今後の科学探査や活動拠点としての適性の議論に資された。 火星については、昨年度は、南緯30°~50°の範囲に続いて、0°~南緯30°(マリネリス峡谷などが存在し、水が地下に有るのでは無いかと考えられている)において、縦孔の存否の調査を行った。結果としては、タルシス三連山の付近についてのみ、縦孔を認めただけであった。火星では、高山で無ければ、縦孔、溶岩チューブの形成、残存が認められないのかもしれない。認められた縦孔の標高、底の様子などが整理された。 更に、本年度、前倒し的に一次調査として、縦孔形成について、計算機実験を行った。その結果、地下空洞への衝突の結果、空洞の天井側には、衝突表面側以上に大きなクレータが形成される背面飛散現象、縦孔壁でのクラックなどが確認出来た。今後、詳細な解析をしていく予定である。 地下探査用レーダデータ、磁場データを使っての、縦孔とその付近の地下構造との関連性の調査は、現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、死の湖と虹の入り江の月の縦孔(陥没地形)について、マルチバンドイメージャ分光データを使って、周辺地質を調査し、その上で年代決定などの解析を試みた。これらの地形は、月の中緯度帯に存在しており、熱的に将来の探査や基地建設に好ましいとされる。死の湖の陥没地形はGoogleXprize参加の日本のハクトチームが着陸を目指す候補地でもある。また、近く予定されているSLIM計画でも中緯度での着陸を検討している。こうした着陸探査の要請に応えるべく、結果は、配布報告物(宇宙科学研究所報告書)にまとめるに至るなど、研究は順調に進められている。また、火星の縦孔については、MROデータについて、昨年度の南緯30-50°に加え、0°-南緯30°の領域の縦孔調査を行った。概ね、予定通り、火星の調査は進んでいる。月の溶岩チューブにおける縦孔形成についても考察を進めるために、前倒しで、計算機実験を行い、縦孔形成を再現するに至っている。 一方、サウンディングレーダや磁場データと縦孔の解析は、継続している。これまでの研究では、縦孔近くの溶岩チューブの形成についてはまだ確証は得られていない。地球観測衛星による分光画像観測データ(たとえば、「TERRA」ASTER)を購入し、ENVIなどを利用して地球上の溶岩チューブとの比較検証を行うことは十分ではなく平成28年度、積極的に取り組む必要がある。 本年度は、成果の一部を日本語で報告書にまとめ出版することが出来た。来年度は、詳細なデータ解析、科学的な知見を付与し、国際学術誌にて発表することを目指す。 海外からの研究者招聘については、今年度は、海外で地下空洞の大規模な会合がありそこでの議論でもって代替した。来年度、これまでの成果をまとめつつ、海外の関連研究者を招聘し、これまでの成果を確認してもらうことを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度(平成28年度)は、本年度までに進めてきた、月の縦孔・陥没地形周りの解析結果、火星における縦孔の分布、孔底の様子の調査結果を整理し、学会発表もしくは出版を試みる段階である。また、縦孔や溶岩チューブ形成過程などの解析も進め、国際学術論文として出版を試みる。 溶岩チューブが存在している可能性のある月についてチューブ候補分布全球マップならびに重要候補地詳細地質図の作成も更に進め、これまでの成果を踏まえ、具体的には、1)チューブの崩壊した痕と考えられる月リル構造のマップの整理、2)「海の縦孔」と分類される月の縦孔構造の周りのマルチバンドイメージャ分光データによる物質分布の把握、それに基づく地質ユニット定義、各ユニットでのモデル年代の推定を行う。3)地下探査用レーダデータ(例えば、「かぐや」LRSなど)や磁場データ(同LAG)に関して、溶岩チューブの入り口候補があるような地域についての解析を進める。 火星においては、4)再度水が存在しそうな緯度帯で、火成活動の帰結としての例えば溶岩チューブのような地下空洞、あるいはカルスト陥没地形である地下空洞における縦孔の調査、5)それらの、月、更には地球との比較検証による、縦孔・地下空洞の存否、特徴の整理を試みる。 6)加えて、計算機実験などを通して、縦孔形成などの研究を進め、科学的な議論に資し、最終的には、チューブを形成するような地域の火成活動とその前後での噴火様式の違いなどを検討する。 海外から火成活動研究の第一人者を招聘し、研究のレビューを受けることも行う。
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Causes of Carryover |
画像処理ソフトの利用が、今年度別途予算での購入したライセンスで利用出来た。また、海外からの研究者招聘を企画していたが、当該研究に深く関係する学会(2nd International planetary cave conference)が急遽開催され、そこへの出席と、その場での議論で、代替された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
画像処理ソフトのライセンスが必要。また、これまでの成果を報告、議論するため、大阪大学や、名古屋大学等の研究者グループとの議論を行うため、国内旅費が必要である。また、海外からの研究者を招聘し、成果の議論を行うことを企画している。
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Research Products
(9 results)