2016 Fiscal Year Research-status Report
リモートセンシングデータ解析による月と火星の地下溶岩チューブ存否検証・分布調査
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26400459
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
春山 純一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (40373443)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 月 / 火星 / 探査 / 溶岩チューブ / 縦孔 / SELENE / かぐや |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成28年度)、SELENE搭載レーダサウンダーデータの月溶岩チューブ調査では、マリウス丘の縦孔近傍で得られたエコーに地下空洞からの反射を示唆するものが確認された。これは、深さにして100m付近の深さからのものであり、米国探査機LROによる縦孔斜め観測から得られている縦孔底の深さに比すると若干深めである。この結果は、昨年度得られていた縦孔形成の計算機シミュレーションによる結果、すなわち天井の崩落部分が、縦孔底に溜まっていて、実際、奥へと続く溶岩チューブの底はもっと低くある、という仮説に調和的とも考えられる。 こうした結果が得られている中、平成28年度中頃に、月の地下空洞の存在について、米国GRAILデータの重力場解析から地下の質量欠損領域の報告が明らかになった。これは地下に空洞、たとえば溶岩チューブの存在を示唆するものであり、レーダサウンダーデータの解析結果とよく一致するものであった。そこで、GRAILデータ解析チームとも議論を開始し、すでに、国際学会(月惑星科学会議:平成29年年3月、米国)で速報的に発表した。 月と火星について溶岩チューブ候補分布全球マップならびに重要候補地詳細地質図の作成については、本年度は、月においては、特に最大規模クラスの(マリウス丘、静の海、賢者の海の)縦孔について調査領域を約100kmx100kmに拡大し、地質区分し年代測定などを行うなどして、整理した。また、火星については、過去に大洋に囲まれていた可能性の高いエリシウム山の麓に多数の縦孔を同定し、それらの深さや、内部の様子などをリスト化し、JAXA宇宙科学研究所リサーチメモランダム(平成29年3月)として公表している。これらの成果は、学会や研究会で議論に資されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
月、火星の縦孔・溶岩チューブについての調査、様々なデータでの相互比較は順調に進んだ。 SELENE搭載レーダサウンダーデータの月溶岩チューブ調査では、マリウス丘の縦孔近傍で得られたデータに、表面からではない、極めて強い地下からのエコーが同定された。この結果は、米国GRAILデータの重力場解析から地下の質量欠損領域の報告(平成28年度中頃)と、地下に空洞、たとえば溶岩チューブの存在の示唆という点で、調和的であり、国際学会(月惑星科学会議:2017年3月、米国)で速報的に発表した。 また、月においては、特に最大規模クラスの(マリウス丘、静の海、賢者の海の)縦孔について調査領域を約100kmx100kmに拡大し、地質区分し年代測定などを行うなどして、整理した。火星については、過去に大洋に囲まれていた可能性の高いエリシウム山の麓に多数の縦孔を同定し、それらの深さや、内部の様子などをリスト化し、JAXA宇宙科学研究所リサーチメモランダム(平成29年3月)としてまとめ、公表した。 これらの成果は、学会や研究会で議論に資され、溶岩チューブの形成、縦孔の形成、或いは今後の探査方法、探査拠点としての利用可能性に重要な情報となっており、概ね当初の予定通りである。 一方で平成28年度中頃に、本研究と密接な関係のある論文が発表され(GRAIL重力場データによる壊れていない空洞の地下存在可能性の指摘)、その解析結果とレーダデータ、あるいは地表の地質データとの相互参照を急ぎ進めた(論文での正式発表は平成29年1月)。この最近発表された知見を取り入れ、本研究内容をより充実させた上で、成果発表(論文投稿)することが、有意義と考えられるため、研究期間を1年延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
事業最終年度となる本年度、研究成果を取り入れた論文投稿を予定し研究を進めていたが、年度中頃に、本研究に非常に関連し、また内容の充実に大いに役立つ知見を報告した内容が発表された(※)。これらは、米国GRAIL重力場データに基づくもので、マリウス丘の地下に、質量欠損領域(地下に溶岩チューブなどの空洞の可能性のある部分)が存在し、またその規模も、チューブ横幅が場合によっては数kmにも到達しうるというものであった。これらの結果と、SELENE搭載レーダデータに見られる地下からの極大反射が観測される場所との調和性を詳細に確かめるなど、解析を更に進め,その上で,論文投稿とすることとしている。そこで、補助事業期間についても延長する。この中で、論文成果発表と、それに向けた関係者との打合せを行う。また、重力場解析チーム(米国)とも、密接な議論を進める。 ※関連論文: 1) Blair D.M. et al."The structural stability of lunar lava tubes", Icarus 282, 47-55,(2017). 2) Chappaz L. et al. "Evidence of large empty lava tubes on the Moon using GRAIL gravity", Geophys. Res.44(1),105-112,(2017). (いずれも,論文化前に学会等で発表有り)
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Causes of Carryover |
事業最終年度となる平成28年度中頃に、本研究成果を取り入れた論文投稿を予定し研究を進めていたが、本研究に非常に関連し、また内容の充実に大いに役立つ知見を報告した内容が発表された。当該論文内容をふまえ、本研究を更に進め、より完成度の高い成果の達成、発表をめざし、補助事業期間を延長したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文成果発表費(10万円)と,関係者との打合せ(5万円)を予定している。
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[Journal Article] 火星エリシウム山麓における縦孔陥没地形リスト2017
Author(s)
後藤, 祐紀; 郭, 哲也; 春山, 純一; 三宅, 亙
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Journal Title
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA Research and Development Memorandum
Volume: JAXA-RM-16-008
Pages: 1-19
Open Access / Acknowledgement Compliant
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