2014 Fiscal Year Research-status Report
南極ドームふじ氷床コア中金属成分が示すエアロゾル気候変動
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26400462
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
鈴木 利孝 山形大学, 理学部, 教授 (90202134)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 南極 / 氷床コア / 金属成分 / エアロゾル / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
南極ドームふじ深層氷コア(全長3035.22m、最深部年代約72万年前)の2508.00-2943.10m(推定年代約35-67万年前)の区間から、厚さ10cm(時間分解能約50年)の氷片として80試料を切り出し、Al、Fe、Mn、Na、Mg、Ca、Sr、Ba等の金属成分全濃度(粒子態濃度+溶存態濃度)を測定した。得られた結果とこれまでの結果を合わせて、過去72万年にわたる気候変動とエアロゾルのフラックス・組成変動との関連性について学会発表と論文発表を行った。 ドームふじ深層氷コアの最深部、3007.00-3034.82mの氷から、厚さ10cmの氷片を18試料分取し、深層氷コアと同じ金属成分の全濃度と溶存態濃度を測定した。下層の5試料(3033.82-3034.82m)については、その金属成分組成と粒子態/溶存態割合が、上層の試料と著しく異なることから、ドームふじ深層氷コアの底面は南極大陸の岩盤あるいは岩盤直上の融解水の影響を受けていることを明らかにし、学会発表を行った。 次期深層氷コア掘削の候補地である新ドームふじ基地設営予定地を含む45地点から得た氷床表面積雪につき金属成分全濃度を測定した。結果を解析して、新ドームふじ基地候補地周辺におけるエアロゾルの輸送・堆積環境を明らかにして学会発表を行った。 ドームふじ深層氷コアにおける金属成分濃度の深度分布から、過去の南極氷床表面におけるアルベド変動の復元を試みるため、雪氷中金属濃度とアルベド変動の関係を明らかにする実験を行った。分光放射計を購入し、2014-2015年冬期に山形県内各地の積雪地において、雪面アルベド測定と表面積雪採取の同時観測を行った。現在、アルベド値を得るための標準化の検討と金属成分分析を行っているところであり、結果が得られ次第、雪氷中鉱物粒子量とアルベド変化の関係のモデル化を試み、学会発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」は、1.南極氷床に空輸された粒子成分とイオン成分の分別解析を行うこと、2.陸・海起源エアロゾル濃度・組成変動と気温や温室効果気体濃度変動との関係を明らかにすること、3.急激な気候変動における陸・海起源エアロゾルの役割を定量的に評価することの3項目である。26年度から28年度までの「研究実施計画」として、ドームふじ深層氷コア約300試料の分析、国内外の積雪地や氷河・氷床における表面積雪中金属成分とアルベドの測定を行って、目的1と2を達成することを計画した。26年度終了の現時点で、ドームふじ深層コアの解析に関しては、底面氷を含め98試料の分析と解析が終了している。さらに、南極氷床表面における金属成分の地理分布測定、山形県内の積雪地における雪面アルベド-雪中金属濃度の関係に関する基礎実験も行うことができたため、達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、ドームふじ深層コアの金属成分分析、山形県内積雪地における雪面アルベド-雪中金属濃度の同時測定を継続実施する。ドームふじ深層コアについては、これまでに氷期から退氷期にかけてのデータを多く取得したので、27年度は比較的低濃度が予想される間氷期相当深度の試料を中心に100試料程度分析する予定である。また、過去2000年程度の気候・環境変動を明らかにするため計画されている第57次南極観測隊による氷床中層掘削に大学院生を派遣してエアロゾル変動解析のための氷コアを取得予定である。 平成28年度は、ドームふじ深層コアにつき、さらに100試料程度の分析を進め、過去72万年のエアロゾル気候変動を明らかにすると同時に、57次南極観測で採取した中層コアの分析から過去2000年の気候・環境変動にともなうエアロゾル変動を、54次南極観測で採取した浅層コアの分析から過去数百年程度の気象・環境変動とエアロゾルの関係を明らかにする予定である。 平成29~30年度は、ドームふじ深層コアの分析の継続と28年度までに得られた結果の総合的解析を中心に行い、急激な気候変動にともなうエアロゾルの組成・降下量の変動を明らかにし、海洋へのCO2吸収機構としての生物ポンプやアルカリポンプ仮説を定量的に検証して発表する予定である。
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Causes of Carryover |
老朽化してメーカーによる消耗品供給も停止している純粋製造装置を新規購入するための物品費を26年度交付申請書に計上していたが、26年度中は在庫消耗品により継続使用が可能となり購入を延期したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額989423円と27年度分助成金200000円の計1189423円は、純粋製造装置と消耗品の購入および人件費に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Chemical compositions of sulfate and chloride salts over the last termination reconstructed from the Dome Fuji ice core, inland Antarctica2014
Author(s)
Oyabu, I., Y. Iizuka, R. Uemura, T. Miyake, M. Hirabayashi, H. Motoyama, T. Sakurai, T. Suzuki, T. Hondoh
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Journal Title
Journal of Geophysical Research
Volume: 119
Pages: 14045-14058
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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