2014 Fiscal Year Research-status Report
高エネルギー落雷に注目した日本周辺の雷活動の気候学
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26400463
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
岩崎 博之 群馬大学, 教育学部, 教授 (70261823)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 雷 / 落雷エネルギー / 気候学 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は,主に,高エネルギー落雷(>4500J:以降,HE落雷)に注目した雷気候学の研究を行った.その結果,日本周辺では冬期の北緯45-55度帯の海洋上において落雷頻度は少ないが,HE落雷の出現する割合が高いことが分かった.また,関東地方では夏期の熱雷に伴う落雷は発生頻度が非常に高いのに対してHE落雷の割合が低く,逆に,春期の積乱雲に伴う落雷の発生頻度が低いのに対してHE落雷の割合が高いことを示した(Iwasaki, 2014).これは季節や領域により,積乱雲内部の大気電気的特徴が異なることを意味しており,そのメカニズムを探るために,H27年度以降では関東地方の落雷を伴う積乱雲の事例解析を行う予定である. 更に,解析領域を全球に広げて落雷気候学の解析を行った.その結果,日本周辺の北緯45-55度帯ではHE落雷の割合が高かったが,これは南北半球の同じ緯度帯における海洋上に共通する特徴であることが分かった.更に,Tibet高原は陸域で唯一HE落雷の割合が高い領域であることも明らかにした(Iwasaki,2015) .Tibet高原における落雷頻度や落雷エネルギーの強さは,標高によって大きく変動する.local規模で定義した高原の標高よりも,0.5-1.0km高い標高で,落雷頻度と落雷エネルギーは最大になる傾向が認められた.特に,落雷エネルギーが最大になる標高は,4-8月の期間で変動しないことから,季節変化に伴う気温変動は,落雷エネルギーが最大になる標高には影響しないことが分かった. また,H27年度から行うHE落雷を伴う積乱雲の事例解析には,docomo社提供の落雷データを利用することにした.予備解析用データを購入し,全球落雷データや信頼性の高いF社落雷データと比較し,雲間放電に関しては信頼度は低いが,対地落雷については解析に充分使える事を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
科研費予算で整備した全球落雷データを使い,日本周辺の雷気候学についての論文を投稿した(Iwasaki 2014).それに加えて,計画にはなかった全球規模の落雷を解析対象とした研究も行い,南北半球の高緯度(45-55度)とTibet高原でHE落雷の割合が非常に高いことを明らかにした(Iwasaki 2015).現在は,Tibet高原における数10kmスケールの地形と落雷エネルギーの関連,および,Himalaya山脈における冬から春にかけての落雷増加メカニズムについての論文を執筆中である.つまり,雷気候学の研究については,計画以上の成果が得られている. また,偏波レーダーを使った雷を伴う積乱雲の事例解析については,諸般の事情により申請書の計画には書かれていない国土交通省のX-rainデータ(公開準備中)を利用することになった.更に,雷解析には極性情報が含まれるdocomo社の落雷情報を利用することとなり,他社の落雷データとの比較も済ませており,2年目後半から始める予定の事例解析の準備も計画通りに進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 落雷エネルギーの強さに注目した全球落雷気候学の研究を行い,高エネルギー落雷が発生し易い領域の積乱雲活動の特徴や大気環境の特徴を明らかにし,学術雑誌に投稿する. 2. 高エネルギー落雷が発生するメカニズムについて考察するために,関東地方を対象に,高エネルギー落雷の割合が高い積乱雲と低い積乱雲を選び出し,国土交通省偏波レーダー(Xrain)データを利用して,事例解析を行う.偏波レーダーからは降水粒子の形状に関する情報が得られるので,積乱雲内部における雹・霰(あられ)の3次元分布の時間変化と高エネルギー落雷との関係について解析を行う予定である.H27年度は,解析事例の選定と偏波レーダーの解析手法の修得に力点を置くことになる.
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Causes of Carryover |
予算を大幅に残した理由は2つある.第1の理由は,予定していた通信総合研究所の沖縄偏波レーダーデータが本研究に向いていないことが判明し,数回にわたる沖縄への出張が中止になり,そのため,旅費を使わなくて済んだことである.第2の理由は,docomo社が手頃な価格で日本全国の落雷データを販売することが分かったことである.docomoデータには,全球落雷データにはない落雷極性が含まれているので,このデータを利用すれば,H27年度に行う高エネルギー落雷を伴う積乱雲の事例解析の質が向上すると期待される.そのためdocomo落雷データをH27年度に一括購入するために,H26年度は節約を重ねて,意図的に,予算を約130万円残した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
docomo落雷データの研究者向け価格は,30万円/月(300km×300km)である.H26年度繰り越し金とH27年度の予算を利用して,6ヶ月分(180万円)の落雷データを購入する予定である.
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Research Products
(8 results)