2015 Fiscal Year Research-status Report
降雪粒子マイクロ波散乱問題解決に向けた3次元粒子構造モデルの開発
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26400464
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
民田 晴也 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 技術専門職員 (80422765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 紀生 愛知工業大学, 工学部, 教授 (20278229)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 降雪粒子観測 / 降水レーダ / レーダ降雪強度 / マイクロ波散乱 / レーザ形状計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーダ降雪強度推定の実用化には、雪など固体降水粒子のマイクロ波散乱特性の知見向上が必須である。降雪粒子の形状と存在向き、含水量は千差万別であり、雪片・霰・霙粒子の混在が更にレーダ降雪強度推定を困難にしている。本研究では、固体降水粒子の立体形状と粒径分布を計測する機器を開発。含水量計、降雪強度計、降水レーダとの同期観測から、粒子形状・種別分類、含水量、粒径分布、降雪量およびレーダ反射因子の観測データベースを作成し、マイクロ波散乱の理論計算技術開発(厳密解)と精度評価への応用、また、粒子種別と粒径分布の関係を調べ、観測的・統計的なレーダ降雪強度の経験式(近似解)の導出を目標としている。 平成27年度は、開発機器とマイクロレインレーダ(24 GHz vertical pointing Doppler radar)を北海道大学低温科学研究所に設営し2015年12月上旬から2016年4月(現在)まで運用、トラブルフリーで観測を達成した。低温研では、含水率計、電子天秤型の降雪強度計、および2-Dimensional Video Disdrometer (2DVD)を運用しており、データベース開発に必要な主要データの取得を達成できた。解析的成果として、粒子立体形状再現アルゴリズムの初期版を開発した。データベース作成には粒子形状の数値化手法開発が必要であり、形状指数であるフラクタル次元の利用を試みている。数値化の検討は不十分であるが、フラクタル次元と落下速度の関係が、板状粒子の落下速度は遅く、丸みを帯びた粒子の落下速度は速いという流体力学に従う傾向を示すことから、概ね正しい立体形状は再現できていると考える。開発機器の粒径分布および落下速度計は2DVDと良い一致を示し、開発機器は廉価であるが2DVDと同等の性能を確保していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標は、(1)昨年度の取得データから降雪粒子立体形状再現アルゴリズムを開発、(2)北海道大学で含水率計、降水レーダとの同期観測を実施、データベース開発に必要な観測データを蓄積することであった。立体形状再現アルゴリズムの初期プロダクトは完成し初期評価ができている。観測実験では順調なデータ取得を達成できた。機器開発としては、より落下速度の速い粒子に対応するため計測速度を向上、より実在粒子形状に近づけるため斜め上方からのカメラ撮影機能を増設、1CHのみ粒子画像の4値グレイスケール化を施すことができ、粒径分布計として既製品と同等の計測性能を有すことが確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はデータベース初期版の完成が目標である。立体形状再現アルゴリズムの高精度化、形状データベース開発のための粒子形状の数値化手法の検討を行う。立体粒子形状を利用した粒子種別分類(雪、霰、霙など)アルゴリズムの開発を行い、粒子種別毎の粒径分布を導出を目指す。粒子種別毎の粒径分布は、分類種別毎に代表的な後方散乱断面積を与え粒径分布で積算することでレーダ反射因子の近似解を得ることが期待でき、固体降水粒子生成の雲物理の調査にも利用価値がある。データベースから個々のマイクロ波後方散乱断面積を算出、粒径分布で積算して得るレーダ反射因子の理論値および立体形状(体積)と含水率から降雪量を見積もり、理論値と観測値を総合的に比較することで、散乱計算結果、粒子形状、含水量の評価を実施しデータベースの完成度を高める。観測実験は北海道大学で継続し、機器改良の性能評価と観測事例の蓄積を行う。
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Causes of Carryover |
北海道大学で継続観測を実施するための観測旅費に加え、名古屋大学雲レーダを北陸で運用する計画が進んでおり、雲レーダとの同期観測実験参加に備えるため計画的に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の開発機器の改良と、北海道大学および北陸での降雪観測実験の旅費として使用する。
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Research Products
(7 results)