2014 Fiscal Year Research-status Report
メガラヤ・バングラデシュ・ミャンマー地域に豪雨をもたらす渦状低気圧の実態解明
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26400465
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤波 初木 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (60402559)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モンスーン / 降水量 / 低気圧 / 季節内振動 / バングラデシュ / インド / ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、高精度降水量データ(APHRODITE、TRMM3B42)と大気再解析データ(JAR25)を用いて、夏季バングラデシュ周辺で発生し大雨をもたらす渦状低気圧の動態と空間構造を解析した。夏季バングラデシュでは、降水変動に約2週間周期で活発期と不活発期を繰り返す季節内変動が卓越する。1979~2007年の統計的な解析から、降水活発期の約60%に渦状低気圧が存在することが分かった。バングラデシュ周辺に渦状低気圧が発生・発達する時は、強い下層の西風が北緯20度付近までしか進入せず、北緯20度から25度の領域は風が弱い。一方、降水活発期の残りの約40%は、低気圧性循環を伴った強い西~南西風が北緯25度付近まで侵入し、バングラデシュ周辺に流入する。渦状低気圧を伴う季節内変動の活発期には、バングラデシュ西部の平野部で降水量が増大するが、低気圧を伴わない活発期には北東部と東部を中心に降水量が増大する。渦状低気圧の発生と経路追跡解析より、この低気圧はバングラデシュ周辺で発生・発達し、停滞する傾向があることが分かった。また、渦状低気圧の合成図解析より、バングラデシュ周辺で発生する渦状低気圧は、水平規模が約600 kmで、高度は約9000mに達する背の高い鉛直構造を持ち、上層に暖気核、下層に冷気核を持つことが分かった。渦状低気圧の強い下層収束域と降水域は、低気圧の東から南東側に存在する特徴がある。さらに低気圧の北東部から東側にかけて、メガラヤ高原やアラカン山脈などの領域規模の地形が存在することが、低気圧を停滞させる一因であると考えられる。これらの結果は、この渦状低気圧の発生・発達が、バングラデシュの夏季総降水量の年々変動を左右する季節内振動の振幅を決定する重要な役割を持っていることを示している。また、今後の高解像度のモデルシミュレーションに対する、詳細な観測事実を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、夏季バングラデシュ周辺で発生・発達する渦状低気圧の動態と空間構造を、観測に基づいたデータ解析より明らかにし、期待以上の結果を得ることができた。当初、平成26年に高解像度数値モデルの予備的実験も行う予定であったが、データ解析の実行を優先したため行わなかった。しかし、降水量や大気再解析データの解析をより詳しく実行したことにより、次年度の数値実験に対するより詳細な観測的事実の提示と、数値モデルの実験設定のより具体的な条件を得ることができた。このことより、全体的には、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の研究計画通り、数値モデルによる渦状低気圧の再現実験と感度実験を中心に研究を行う。また、平成26年度のデータ解析から、バングラデシュ周辺の降水量活発期に渦状低気圧が発生するかしないかは、より時空間スケールの大きな季節内振動による大気循環場の変動が重要であることが示唆された。この点は、渦状低気圧の発生、発達に重要な点であるため、引き続きデータ解析も進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は大型計算機での数値モデルの予備実験を行わなかったため、その分が残金として残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この残金はそのまま、次年度の計算機使用料として使用する予定である。
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