2015 Fiscal Year Research-status Report
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26400467
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 勝 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (10314551)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポーラーダイポール / 二つ玉低気圧 / 地球流体力学 / 偏西風 / スーパーローテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、「地球および金星の双子渦」と「それに関連した高速風」の力学過程を解明することである。今年度は、金星大気において東西波数1の強制波が低安定度層(高度55㎞付近)で砕波し、波数2が卓越して、双子渦構造が見えるか否かについて調査した。この実験の渦構造は強制波の振幅に強く依存し、明瞭な双子渦は見えない。特に、振幅が強すぎると、砕波により対流や重力波が生じ、双子渦構造が明瞭でなくなる。このように、強振幅の惑星スケール波の砕波は双子渦構造を壊す方向に働く。他方、惑星スケール波の砕波は双子渦そのものよりも、双子渦形成において重要な大気大循環構造に多大な影響を与える。この点について調査し、砕波に伴う波動や対流による熱および運動量の鉛直輸送過程に関する成果をTheoretical and Applied Mechanics Japanにまとめた。 昨年度に引き続き、厚い雲で覆われた状況を簡略化したモデルで、双子渦の背景場として重要なスーパーローテーションや子午面循環を調査した。大気大循環の自転依存性実験において、自転が遅いにも関わらず極域にフェレル循環が出現した。このフェレル循環はスーパーローテーションを弱める方向に働き、この循環を駆動する波は、極域に広がった混合ロスビー重力波のような構造で、極を中心に双極子構造(正と負のジオポテンシャル擾乱成分の極大)をもち、極を横切る子午面流が卓越する。このような、従来の地球流体では見られない興味深い極域構造が発見された(Journal of Geophysical Research, 印刷中)。日本付近の双子渦(二つ玉低気圧)に関しては、二つ玉低気圧の構造がatmospheric riverに与える影響について解析をおこなった。近接した2つの低気圧の併合過程が効率よく北へ水蒸気を輸送することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
惑星大気大循環における双極子構造に関しては、簡略化GCMで得られた波の構造を詳しく解析し、その研究成果が学術雑誌に受理された(Yamamoto and Takahashi 2016, J. Geophys. Res., accepted).この研究や金星極域渦に関連した成果をJapanese-French model studies of planetary atmospheres (神戸)で発表した。日本列島を挟んだ双子渦に関しては、二つ玉低気圧がatmospheric riverに与える影響について解析を行い、日本流体力学会年会2015(東京)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も九州大学の大型計算機を用いた数値実験を行う。日本列島を挟んだ双子渦の力学の研究では、引き続き、領域気象モデルの結果を解析して、個別の事例ごとに二つ玉低気圧の発達・併合過程を解析する。二つ玉低気圧形成の主因を絞り込むために、渦位解析等をさらに進める。また、初期条件や境界条件や物理パラメーター(例えば、自転速度、空間スケール、温度勾配)を自由に変更できるモデルを用いて、双子渦の力学で重要なパラメーターを変えた感度実験の解析を行う。前年度に引き続き、大型計算機使用料、投稿料、学会発表旅費が必要となる。 平成29年度以降は、平成26年度から平成28年度に行った数値実験結果をもとに、前年度までに作成した簡略化モデルを用いて、素過程を取り出した理想化実験を行う。“現実的で複雑な気象シミュレーション”と“素過程を抽出した理想化実験”の双方向から『高速風を伴う双子渦の力学』を調査し、成果をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
1)論文の再投稿の改訂に時間がかかったこと、2)論文の受理が3月になり掲載が翌年度になったこと。この2点により関連した予算を次年度に繰り越した。特に2)に関しては、オープンアクセスを予定しており、高額な掲載料がかかるので、繰越額が多くなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越分は、執筆中の論文の英文校正や掲載予定の論文の投稿料に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)