2015 Fiscal Year Research-status Report
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26400468
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
市川 香 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (40263959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 泰正 独立行政法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, グループリーダー (90399577)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 内部潮汐 / 中規模渦 / 深海生物漁場 / メカジキ / 高分解能データ同化モデル / 流速プロファイル / 漁獲位置情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,父島周辺で局所的に中深海生物が豊富な漁場(「深海のオアシス」)の形成原因について,中規模渦による内部潮汐の変動との関係を探るものである。2年目となる2015年度は,高分解能海洋データ同化モデルの解析と,流速の鉛直プロファイル観測データの取得,漁獲位置情報の取得,ウェッブサイトによる漁業者への情報発信の準備を行った。 潮汐のような短時間スケールの現象と,中規模渦など長い時間スケールの現象による密度場の変化を同時に扱うことができるJAMSTECの高分解能海洋データ同化モデル(JCOPE-t)を解析することで,中規模渦の接近などに伴う父島周辺の海底地形付近の密度成層の変化によって,内部潮汐波の強度が変わることは確かめられた。これは,論文としてJGRに掲載された。 ただし,データ同化モデルで再現された密度場や流速場の変化が,現実の変化を良く再現していることを確認する必要がある。また,こうして得られた流速場の変化と深海漁場形成との対応関係を知るために,漁獲量変化との対応を調べる必要がある。 そこで本研究では,小笠原水産センターの毎月の密度場の観測の際に超音波流速計を取り付け,流速の鉛直プロファイルのデータの取得を開始した。また,昨年度末よりGPS機能付きのカメラによる正確な漁獲位置の把握も開始し,現在も漁獲位置情報を追加している。 さらに,JCOPE-tの計算結果を小笠原の漁業者に積極的に提供することで,流速場変化と漁獲量との対応関係をより能動的に調査する。これにより,定性的ではあるものの,毎日の現場感覚として深海流速場と漁場形成の対応関係の調査が可能となる。既に情報の提供方法について漁協への意見調整を行い,それを反映させたウェッブページを準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海洋データ同化モデルJCOPE-tの解析は順調で,既に論文化できている。 観測現場は,当初の予定では大潮・小潮を含む2週間の流速計の係留を予定していたが,長期間の小笠原海域航海という日程が公募航海にそぐわなかったため,採用されなかった。そこで,小笠原水産センターの毎月のCTD観測に超音波流速計を増設することで,より広い範囲で流速の鉛直プロファイルを直接計測し,潮流観測の頻度を上げてモデルの精度検証を行うことにした。超音波流速計による試験データ採取は完了しており,現在は船に設置されている船底ADCPの三層の流速データとの比較により,CTDへの最適な取り付け方法やデータ処理方法について検討中である。 GPS機能付きの防水カメラによる漁獲位置データの取得は順調で,2015年12月の集計の段階で350点近い正確な漁獲位置情報が得られている。ただし,多くは春先の産卵期のデータなため,流速場変動との直接的な対応関係が不明確である。それ以外の時期のデータ収集にはもう少し時間を要する。 さらに,今年度から開始する新しい試みとして,漁業者にJCOPE-tによる深海流速場の情報を積極的提供することにして,日々の漁獲の中で漁場形成と流速場の対応を現場で調査してもらうことにした。既に試験的な公開を済ませて漁業者からの意見を徴集し,それを反映させたウェッブページを近く公開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,小笠原水産センターの毎月の観測による密度と流速の鉛直プロファイルデータを解析して,データ同化モデルの精度検証を行う。一方的なバイアス等が確認された場合,データ同化のチューニングパラメータの調整などを行い,補正する。 流速場と深海魚場形成との対応は,GPS機能付き防水カメラによる漁獲位置情報を解析するとともに,その補強として過去のメカジキの漁獲データも使用する。 さらに,こちらが提供するJCOPE-tの深海流速場を漁業者に参照してもらい,日々の漁獲の中で現場状況の感想を調査する。定性的ながら毎日の情報を集約することで,漁場形成と流速場変動,とくに内部潮汐の変動との定量的な評価の基礎資料を作成する。
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Research Products
(2 results)