2016 Fiscal Year Research-status Report
月周回衛星SELENE観測データによる月の電磁気環境の詳細の解明
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26400477
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西野 真木 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (50466794)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 月プラズマ環境 / 太陽風 / ウェイク / 衝撃波粒子加速 / 帯電 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まず昨年度に発見した月が地球磁気圏衝撃波の前面(フォアショック領域)に存在するときの現象に着目して、下記のことを明らかにした。ウェイクに流入するイオンおよび電子、さらにそれらが月面に衝突することによって放出される2次電子の電流バランスを考慮した解析をおこなった。月面への流入イオンが増加するときに電子の流入も増加する傾向が見られ、これは2次電子の放出を含めて全体として電流バランスが成立していることを示している。また、イオンが流入する場合には夜側月面のポテンシャルが上昇するが、この上昇にはイオンの流入だけでなく2次電子の放出も寄与していることを示している。 次に、月の前面で太陽風の磁場強度が減少するイベントを調べた。このイベントは、太陽風の磁場が流速ベクトルとほぼ平行な場合で、かつ、月面の磁気異常が非常に弱いかほとんど無い領域で発生していた。月面では太陽風プロトンの一部が反射するが、磁場が平行であるため太陽風の誘導電場は小さく、反射プロトンは上流側にさかのぼることができ、その際にジャイロ運動を繰り返す。そのため、反磁性効果が顕著となり、その場の磁場の大きさを減少させるものと理解することができる。定量的には、磁気圧の減少分を反射プロトンのプラズマ圧が補い、全体としては周囲との圧力バランスが成立している。これは、反射プロトンの密度は低いが実効的な温度が高いため、プラズマ圧としては無視できない大きさになることが原因だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フォアショックでの観測結果について論文をまとめて投稿したところ、電流バランスを含めた定量的な解析を加えるよう複数の審査員からコメントを頂いた。その解析を新たにおこなったため、当初の予定と比べて多くの時間を費やすことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、主として下記の研究をおこなう。 [課題3, 6] 主にウェイクの静電波動励起イベントに関して、波動データ(LRS-WFC)まで含めた総合的解析をおこなう。 [課題5] 磁気異常周辺の物理について、 電子・イオンの分布関数を調べることにより、これまでの1次元モデルを3次元に拡張する。
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Causes of Carryover |
米国カリフォルニア大学バークレー校を訪問して議論をおこなったが、その際に別予算で出張することができたために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
特に神戸大学・金沢大学との共同研究の際の旅費として使用する予定である。
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