2015 Fiscal Year Research-status Report
中生代初頭における異なる気候区での古風化変動史の比較
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26400485
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 孝紀 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (00303446)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 古風化 / テチス海 / ゴンドワナ大陸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では三畳紀において温帯域と亜熱帯域にあった2地域の気候条件を堆積物の古風化記録から復元し,当時の広域的な気候条件を検討する.平成26年度にはかつて温帯域で堆積したネパールのペルム・三畳系を対象に検討を行い,平成27年度には亜熱帯域に位置していたオマーン地域の同時代の地層について調査を行った. オマーン地域では,オマーン山地北部のスメイニ地域に分布するスメイニ層群マカム層を対象として地質調査を行い,堆積相解析によって堆積環境の復元を行った.昨年度の成果と併せて,精密な柱状図を作成して岩相の記載を行った.この結果,マカム層の下部を占めるペルム系上部では海底下の斜面崩壊に起因する重力流堆積物が卓越することがわかった.三畳系においてもこのような斜面崩壊に由来する堆積物は頻繁に含まれるものの,その層厚は相対的に薄く,浅海性の石灰岩礫を含む含礫泥岩や,層厚数mの礫岩から構成される.これらの地層は,厚い層厚をなす遠洋性石灰岩や泥灰岩,遠洋性泥岩の中に挟まれ,層状のシート状堆積物や側方連続性の不良な塊状堆積物として出現する. また,スメイニ層群堆積時の古風化条件と供給源の変化を検出するために,採集した泥岩試料の主要元素について化学分析を行った.これによれば,マカム層の泥質岩は標準的な泥岩に類似した組成を持ち,アルミナや鉄に一般に富み,シリカに乏しい特徴を示す.しかし,一部ではアルミナに乏しく,相対的にナトリウムなどに富む層準が複数認められる.この堆積物の化学組成の時代的変動は岩相変化との関連性に乏しい.そのため,泥岩組成の差違を生じさせた陸上域の化学風化条件の変動は海水準変動やテクトニクスとは独立に生じていた可能性があり,今後の詳細な検討が必要と考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続いて行われたオマーン北部スメイニ地域での地質調査によって,この地域のペルム系から三畳系下部での岩相の詳細が明らかとなった.同時に,堆積環境の復元もペルム系から下部三畳系までが達成された.一方,同地域の中部~上部三畳系については示準化石による精密な時代認定が困難であったため,堆積環境の時代的変遷についての議論が滞っている状況にある.この点については遠洋性石灰岩の安定炭素同位体比層序の検討を試み,精密な時代認識を行う予定である.化学分析による古風化度の推定も順調に行なわれており,一定の時代的傾向を見いだしている.今後,微量元素を用いた源岩の検討を加えることで,風化状況のより精密な評価が可能となると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
ネパールヒマラヤで昨年度行った調査では,断層などの構造的な攪乱によって垂直方向への十分な連続性を保ったセクションを見いだせなかった.そのため,当初目標としていた温帯域に堆積した三畳系堆積物の評価については課題が残っている.これについては平成28年度に極西ネパールにおいて調査を行い,岩相記載と試料採取を実施する予定である. また,オマーン地域での堆積物の安定炭素同位体比層序の確立によって時代認識を確立し,堆積環境変化と精密な古風化度の変遷史を復元するつもりである.
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Causes of Carryover |
外国(ネパール・オマーン)からのサンプル運搬料金として確保していたが,円高のために当初見込んだものよりも請求額が下がった結果,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度請求額とあわせ,調査経費の一部として使用する.
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