2015 Fiscal Year Research-status Report
琵琶湖堆積物の高時間分解能環境記録復元による水収支予測仮説の検討
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26400493
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井内 美郎 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00294786)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水収支 / 気候変動 / 湖沼 / 堆積物 / 音波探査 / 琵琶湖 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は琵琶湖中央部の高島沖ボーリング地点で得られた気候変動のデータと愛知川河口沖ボーリング地点で得られた湖水位変遷データとの比較を行った。高島沖ボーリング地点で採取したピストンコア試料の詳細な炭素年代値をもとに過去約5万年間の年代モデルを作成したところ、従来の直線状の年代モデルとは異なり、いくつかの変曲点を持つ折れ線状の曲線が得られた。つまり、堆積速度が相対的に大きい時期と小さな時期とが交互に存在することが明らかになった。この結果と同じく高島沖ピストンコアで得られた有機炭素濃度曲線と比較した結果、有機炭素濃度が高い時期つまり相対的温暖期に堆積速度が小さく、有機炭素濃度が低い時期つまり相対的寒冷期に」堆積速度が大きいという結果が得られた。次に愛知川河口沖ボーリング試料の含砂率について、高島沖コアの有機炭素濃度変化との対応を検討した。その結果、含砂率が高い時期と有機炭素濃度が高い時期が対応することが明らかになった。ただし、1.5万年前以降については含砂率が低い時期と有機炭素濃度が高い時期とが対応していた。このことから、琵琶湖の湖水位は氷期には相対的温暖期に低下し、1.5万年前以降は相対的温暖期に湖水位が上昇していたと推定された。1.5万年前のモード変化は、氷期には冬季の降雪量が夏季の降水量を上回り、1.5万年前以降は夏季の降水量が冬季の降雪量を上回っていたためと考えられる。 次に、愛知川河口沖ボーリング地点を含む琵琶湖東岸域120地点において水深5m間隔で表層堆積物を採取し、含砂率を基にした古水深推定のための変換式を作成した。これによって昨年度行った暫定的な湖水位変遷史の推定をさらに向上した精度で検討することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「日本列島における長期的(数千年~数百年オーダー)水収支変動を予測するための作業仮説を設定し、それを検証する研究を実施する」ことを研究目的としている。本年度は湖水位変動と気候変動との関係が数千年オーダーで明らかになったことにより当初の目標は達成されたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度:研究成果のとりまとめを重点的に行う。なお、必要に応じて補足的分析・再分析を実施し、データの質的向上に努める。得られた研究成果については、地球惑星関連学会合同大会、地質学会で発表する。 平成29年度:最終年度として研究成果のとりまとめを重点的に行う。
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Causes of Carryover |
本研究は「日本列島における長期的水収支変動を予測するための作業仮説を設定し、それを検証する研究を実施する」ことを研究目的としている。平成28年度には研究成果のとりまとめを重点的に行うこととしているが、「必要に応じて補足的分析・再分析を実施し、データの質的向上に努める」ために、試料の選抜・粉砕等の分析前処理を行うこととしている。これに関して、補足的分析・再分析を行うべき項目や層準の選定を慎重に行う必要が生じたため、分析関係に必要な費用を翌年度に回すこととした。その理由として、昨年度実施した元素分析の結果、アルミニウム濃度と含砂率の間に負の傾向が見られ、上記で述べた降雪量と堆積速度の関係が裏付けられるデータが得られる可能性が高まったこと、ほかの元素などでさらにそれを裏付けられる可能性が高まったことがあげられる。現在、これに関して分析すべき元素の種類や層準の選定を進めている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は分析試料の乾燥・粉砕などの前処理を行い、依頼分析を行う予定である。予定された予算は、そのための分析補助者への賃金および依頼分析費などに使用の予定である。作業仮説の検証に関しては全体としては順調に進んでおり、今回の分析はそれをさらに補強する関係にあるため、研究計画全体に関して影響は全くない。
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Research Products
(7 results)