2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400496
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
金松 敏也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, グループリーダー (90344283)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 南海トラフ / 分岐断層 / 海底地すべり |
Outline of Annual Research Achievements |
国際深海科学掘削計画の第333次航海において熊野灘南海トラフ陸側斜面で6層の地すべりユニット(以下MTD)が掘削された。熊野灘南海トラフ陸側斜面上部には南海トラフ地震を引き起こしてきた分岐断層が伏在し、また周辺に海底地すべりによる崩壊痕が認められるため、分岐断層活動とMTD発生の連動が推定される。しかし両者の事実関係は不明なため、本研究ではその実態を調査研究する事を目的としている。本年度の調査では地すべりユニットMTD1の給源地を明らかにし地すべり発生メカニズムの情報を得ることを目指した。国際深海科学掘削計画の掘削地点(C0018)から北東の分岐断層に向けながら、海底下音響構造調査、海底画像観察、採泥調査を実施した。その結果、海底地すべり層の始点部を音響構造に確認できた。この構造は分岐断層上盤の急傾斜地からスライディングして下部斜面平坦部でスタックした様相を示す。同様な構造がさらに下部音響層にも認められた。またスライディングした急斜面には窪地が形成されイベント後に堆積層がこれを埋積している様子が音響構造に確認できた。地すべり層は海底下距離からC0018点のMTD1に相当すると考えられる。また近傍で採取した堆積物コアをCT-X線で解析した結果、表層から50cm以下の層準でC0018地点と同様に密度が強い垂直リニエーション構造が発達していることが分かった。今年度の調査観測によりMTD1は分岐断層の上盤から発生していることを示せた。この事は、南海トラフの分岐断層の上盤の強振動、すなわち分岐断層が活動する地震に起因した事を示唆している。またC0018地点では認識できなかった他の地震イベント層も分岐断層直上で解析できる可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に計画した研究が順調に進み、目的の海域で観測をする事ができた。想定した場所と違う場所に目的の音響構造が見いだされた。また試料採取も実施でき、一部解析をおこない平成28年度の解析につなげる事ができた。これまで本研究で得られた観測事実は、本研究の観測海域で南海トラフ分岐断層活動を解析できる可能性があり、南海トラフ地震の理解において重要な知見蓄積が期待できる。以上から平成27年度の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は本研究の最終年度にあたる。平成27年度に採取した試料の解析を進め、地すべりが起こった年代解析、地すべり発生のモデル化を進め、地すべりと分岐断層活動の関連をこれまでの知見と比較し本研究のまとめを行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度9月に採取した試料について年代解析等を進めようと計画した。海底コア試料の解析箇所を決めるため先に基礎的な解析を進め最適場所を決定する必要があったが、解析機器借用の期間が年度末になったため、年度内に解析等に付する予算を執行できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に、採取試料の年代解析等の委託に使用する。
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