2016 Fiscal Year Research-status Report
最終氷期最盛期以降の北太平洋中・深層環境の高精度復元
Project/Area Number |
26400504
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大串 健一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10312802)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 底生有孔虫 / 酸素同位体比 / 北太平洋中層水 / ヤンガードリアス |
Outline of Annual Research Achievements |
最終氷期末には急激な地球温暖化に伴って北太平洋の海洋循環が千年スケールで著しく変化した可能性が指摘されている.しかしながらその実態は古環境データが不足するため未だに明らかではない.本研究では,最終氷期以降の北西太平洋の中層水循環を明らかにするために,北海道苫小牧沖太平洋の水深777mの海底から得られた堆積物コアについて古環境分析を行った.北海道沖を対象としたのは,オホーツク海から流出する中層水の影響を最もよく記録する海底堆積物コアが得られる場であるためである.現在の北太平洋中層水の元となる起源水はオホーツク海でできているとされ,その水は太平洋外洋に流出し,やがては三陸沖の混合水域で北太平洋中層水の形成が完了する.よって北海道沖における親潮中層水の変動を明らかにすることができれば,それは北太平洋中層水の循環変動の復元につながると期待される.中層水の環境指標としては,底生有孔虫の酸素・炭素同位体比を用いた.また親潮亜表層水の変動もとらえるため,浮遊性有孔虫の同位体比についても分析を行った.同位体比分析に基づき,底生有孔虫からは海底直上の中層水の環境変動,浮遊性有孔虫からは海洋表層~亜表層の環境変動を推定した.分析の結果,底生有孔虫の酸素同位体比は, ベーリングアレレード温暖期からヤンガードリアス寒冷期にかけて0.3~0.4‰ 増加した.これは中層水の寒冷化の可能性を示しており,その起源は北からと考えられる.また炭素同位体比は,同寒冷期における栄養塩濃度濃度の低下を示しており,酸素同位体比と整合的な結果となった.一方, 同海域の水深1,366 mから得られた海底コアの底生有孔虫の酸素同位体比の結果は,そのような明確な寒冷化を示していなかった.これらの結果に基づき,ヤンガードリアス寒冷期には寒冷化な中層水は700~800 mで活発に循環していたと推測された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は下北半島沖およびベーリング海から得られた海底コアの分析を行った.さらに,北西太平洋シャツキーライズから得られた海底コアの放射性炭素年代測定結果および深海生底生有孔虫の群集解析結果を公表論文としてまとめることができた,(現在,学術雑誌に投稿中).下北半島沖から得られた海底コアについては,高知大学海洋コア総合研究センターにおいて有孔虫の酸素・炭素同位体比分析を実施した.これにより津軽海峡の太平洋側出口付近の完新世の環境変動が一部明らかとなった.ベーリング海から得られた海底コアについては,最終氷期の層準の深海生底生有孔虫群集を高解像度で分析を試みた.ダンスガーオシュガーイベントに対応する海洋底での貧酸素化イベントの存在が明らかとなった.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでのベーリング海の海底コアの底生有孔虫群集の分析と下北半島沖コアの有孔虫の酸素同位体比を分析を続けて時間分解能を上げて古環境データを追加していく予定である..
|
Causes of Carryover |
放射性炭素年代測定を実施予定であったが,残額が少なかったため次年度に繰り越した.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
放射性炭素年代測定(1試料約6万円)を実施する.
|
Research Products
(1 results)