2014 Fiscal Year Research-status Report
極低温原子間力顕微鏡によるアモルファス氷の表面構造および表面電位の解明
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26400507
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日高 宏 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00400010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香内 晃 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60161866)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アモルファス氷 / 極低温原子間力顕微鏡 / 氷星間塵 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子雲内に大量に存在しているアモルファス氷は,分子雲内で生じる複雑な分子の形成や彗星の進化等に決定的な影響を与えることが知られている.アモルファス氷の重要な物性値を決めるナノスケール構造を明らかにすることが求められているが,既存の構造研究手法(X線,電子線回折法や比熱,密度測定)では困難である.そこで,新たな構造研究手法として極低温原子間力顕微鏡を用いて,アモルファス氷表面のナノスケール構造解析を行なっている.
1.アモルファス氷表面構造観察結果 超高真空内に設置した低温基板(45-105K)に,水分子を蒸着し作成したアモルファス氷の表面形状を極低温原子間力顕微鏡を用いて測定した.測定条件は,使用基板Si(111),基板温度(45K, 103-108K),蒸着速度(0.1-1nm/min),氷厚(3nm, 20nm, 40nm)である.観察の結果,どの条件においてもおおよそ5nm程度の氷塊の凝集体であることが明らかになった.また,表面形状(氷塊の凹凸の高低差)は,基板温度に依存することも明らかになった.この表面形状の温度依存性は,これまで言われてきた温度依存性とは異なる結果であり,形状測定法によって観察している表面粗さのスケールが違い,必要な物性値の見積もりに適した表面粗さを考慮する必要性を示している. 2.装置の改良(反射型電子線回折装置の導入および最低到達温度の改善) 様々な蒸着条件で作成した氷がアモルファスなのか結晶なのかを調べるため,反射型高エネルギー電子線回折装置(RHEED)を導入することとし,電子線検出システムの設計製作を行った.また,現有の極低温原子間力顕微鏡の最低到達温度は45K程度であり,分子雲環境温度程度(~20K)には達していないため,更なる低温化および上述したRHEED測定の電子線飛行経路確保のため,冷却部品の再設計・再制作を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では平成26年度に装置の最低到達温度の改良を完了させ,平成27年度より実験を行なうことになっていたが,計画を変更し,現状の温度可変範囲内で可能な実験と装置改良を平行して行なった.平成26年度内に装置の改良は完成しなかったが,それは実験を行なったこと,および研究計画になかったRHEEDの導入にともなう新たな部品の設計・製作に時間を要したためである.最低到達温度改善に必要な改良部品の製作はすでに完了したこと,および,平成27年度に計画していた実験の一部を前倒しして行なったことを鑑みて,装置改良は計画通り進まなかったが,達成度は「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度初頭に最低到達温度の改良を完了し,Si(111)基板を使用し20K付近での実験を行なう.その後,当初の計画通り,Pt(111)基板を用いた実験を広い温度範囲で行なう.また,表面電位測定実験も順次開始していく. 平成28年度は,計画通りHighly Oriented Pyrolytic Graphite 基板を用いて実験を行ない,すべての実験データから,アモルファス氷構造および表面電位構造の基板種依存性を議論する.
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Causes of Carryover |
報告した収支状況では457,955円を次年度に繰り越した事になっているが,3月にPt(111)基板を401,760円ですでに購入しており,実質の残金は56,195円である.よって,ほぼ計画通り予算の執行を行なっている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は,実験に使用する消耗品に大きな金額が必要である.状況によっては実験回数が増えることが考えられるため,繰越金は実験にかかる消耗品費に充当する予定である.
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Research Products
(1 results)