2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400511
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
興野 純 筑波大学, 生命環境系, 講師 (40375431)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フェリハイドライト / ヘマタイト / ナノ鉱物 / PDF法 / フミン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
水酸化鉄であるフェリハイドライトは,粒子が凝集し5~10 nmに成長するとフェリ磁性の性質を示し磁石として挙動し,粒径が10 nm以上になると,フェリ磁性は消えヘマタイトに変化する性質を持つ.初年度は,フェリハイドライトからヘマタイトに変化する過程での,結晶構造変化メカニズムと,堆積腐食層に含まれる有機酸の影響を解明するため研究を行った.本研究では,はじめに純粋なフェリハイドライトを得るために,硝酸鉄9水和物水溶液を作り中和して75℃で一定時間加熱し,ゲーサイトを含まない均一なフェリハイドライトを合成した.その後,水溶液を4時間加熱し続けるとヘマタイトの相が出現し,24時間の加熱によってフェリハイドライトは完全にヘマタイトに変化した.高エネルギー加速器研究機構PF-BL8Bでの全X線散乱強度測定の結果,フェリハイドライトからヘマタイトへの結晶構造内部の変化は非常にわずかであったが,今後,詳細な原子対分布関数(PDF)解析によってさらに解析を進める予定である.続いて,フミン酸を用いてフェリハイドライトの粒子凝集への有機酸の影響について調べた.実験は,硝酸鉄9水和物水溶液にアルカリで溶解させたフミン酸を混ぜ,それを75℃で加熱してフェリハイドライトからヘマタイトに変化する様子を比較した.実験の結果,少量のフミン酸は,フェリハイドライトからヘマタイトへの変化にまったく影響を及ぼさず,PF-BL8Bでの全X線散乱強度測定の結果も,フェリハイドライトからヘマタイトへの変化はフミン酸の有無に無関係であることが明らかになった.つまり,有機酸の存在によってフェリハイドライト粒子の凝集は抑制されないことが示唆され,フェリハイドライトは様々な有機分子が共存している地球表層環境において,有機酸の影響は一切受けない可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,初年度において,高エネルギー加速器研究機構PF-BL8Bにて,純粋なフェリハイドライトからヘマタイトへの変化の全X線散乱強度を細かく測定することが出来た.今後は,今後,詳細な原子対分布関数(PDF)解析によって結晶構造解析を進め,フェリハイドライトからヘマタイトへの結晶構造変化を明らかにする予定である.さらに,フミン酸を用いたフェリハイドライトの粒子凝集への有機酸の影響についてもPF-BL8Bでの全X線散乱強度測定を実施し,フェリハイドライトからヘマタイトへの変化はフミン酸の有無に無関係であること可能性が示された.この結果は当初予想していた結果とは異なるが,今後実験を重ねて,その可能性を検証していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は,原子対分布関数(PDF)解析によってフェリハイドライトからヘマタイトへの結晶構造変化のメカニズムの解明を目指す.さらに,フェリハイドライトの粒子凝集への有機酸の影響についても実験を重ねて,有機酸の有無にフェリハイドライトの粒子凝集は無関係である可能性を検証する.
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Causes of Carryover |
第一原理計算を行う高性能ワークステーションを購入予定であったが,既存のパソコンの性能をグレードアップすることで対応出来たため,使用計画に差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験消耗品の購入費に使用する.
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Research Products
(14 results)