2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400511
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
興野 純 筑波大学, 生命環境系, 講師 (40375431)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フェリハイドライト / ヘマタイト / フミン酸 / バクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
地球表層環境には粒径が100nm以下の水酸化鉄ナノ粒子が普遍的に存在している.粒径が数 nm程度の水酸化鉄ナノ粒子であるフェリハイドライトは,粒径サイズが増加するに伴ってその結晶構造を変化させる.今年度の研究では,研究計画に従って,微生物(バクテリア)の活動によって分泌されるバイオフィルム(細胞外多糖類等)によるフェリハイドライトの結晶成長や結晶構造のへの影響を明らかにするために研究を行った.本研究では,はじめに硝酸鉄9水和物水溶液を中和した後,75℃で一定時間加熱して,純粋なフェリハイドライトを合成した.その後,筑波大学構内から採取した土壌からバクテリアを抽出し,寒天培地で培養し単一のバクテリアコロニーを得た.バクテリアの選別は,最も繁殖密度の高いバクテリアコロニーを選んだ.その後,合成フェリハイドライトとバクテリアコロニーを液体培地中で混合し一定の温度下で保持して,フェリハイドライトの変化を観察した.高分解能電子顕微鏡による観察からは,バクテリアが分泌する表面の細胞外多糖にフェリハイドライトが吸着していることが確認した.フェリハイドライトの構造変化を調べるために,高エネルギー加速器研究機構PF-BL8Bの大型IPデバイシェラーカメラでX線散乱測定を行った.測定の結果,バクテリアと混合させる前後のフェリハイドライトを比較すると,両者のX線散乱プロファイルには,大きな変化は見受けられなかった.今回のバクテリアの活動は,フェリハイドライトの構造変化には大きな影響を与えないことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,実験計画に従って,1年目はフェリハイドライトからヘマタイトへの構造変化メカニズムの解明および有機酸であるフミン酸の影響の解明,2年目はバクテリアが分泌する細胞外多糖類のフェリハイドライトへの影響の検証を行った.1年目の研究からフェリハイドライトの結晶構造変化のメカニズムは明らかにすることに成功した.一方,フェリハイドライトは,植物や微生物(バクテリア)等の生命活動が盛んな有機的環境下に存在しており,これらが少なからずフェリハイドライトに影響を及ぼしていると考えられたが,本研究の結果は,フェリハイドライトの結晶成長や結晶構造に植物やバクテリアの活動は大きな影響を与えないことを示した.この結果は当初予想していた結果とは異なるものであり,議論の余地を残すが,今後実験を重ねて,それを検証していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
フェリハイドライトは,粒子サイズの変化に伴って結晶構造がヘマタイトに変化することが示されており,この構造変化は,圧力による構造の収縮と関連していることが予想される.したがって,3年目は,フェリハイドライトの圧力による影響を解明し,水酸化鉄ナノ粒子の構造変化特性の本質を明らかにすることを目指す.
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Causes of Carryover |
高圧実験用のダイヤモンドアンビルの購入を計画していたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高圧実験用のダイヤモンドアンビルを購入する.
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Research Products
(27 results)