2015 Fiscal Year Research-status Report
低温プラズマと触媒複合プロセスの活性化メカニズムの解明と高度利用技術の確立
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26400539
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
金 賢夏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 主任研究員 (20356893)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 慶之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 研究員 (00635328)
尾形 敦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 研究副部門長 (70356690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低温プラズマ / 触媒 / VOC分解 / プラズマー触媒 / サフェースストリマ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、プラズマと触媒の複合化に向けた基盤となる要素技術を得るために基礎的な検討を行った。プラズマ中に生成される活性種の拡散距離と触媒表面からプラズマまでの距離の比として定義される無次元パラメータを提案し、プラズマー触媒の直接作用が得られる条件を示すことができた。また、プラズマと触媒の個々のプロセスにおける特異的な反応時間を比較することによって、両者のカップリングに必要な基礎的検討課題を提示した。 プラズマと触媒の相互作用解明の一環として、触媒表面で形成されるサーフェスストリマの進展過程について高感度ICCDカメラを用いてナノ秒オーダーで観察を行い、触媒表面における1次ストリマと2次ストリマの計測に成功した。1次ストリマの進展速度は、印加電圧に比例して増加すると同時に、触媒の種類に大きく影響されることが分かった。ガンマアルミナ系では、担持金属として白金(Pt)より銀(Ag)が優れていることが分かった。酸化チタン系の触媒では、1次ストリマで最高で660 km/sの進展速度が計測された。一方で、2次ストリマは1次ストリマに比べ進展速度が遅く、印加電圧に依存せずほぼ一定な進展速度を示した(酸化チタン系で120 km/s、ガンマアルミナ系で70 km/s)。バンドパスフィルターによる発光パタンの比較からは、気相のストリマと同じように窒素のSPS(second positive system)の発光がメインであることが分かった。また、プラズマ反応器に充填した触媒ペレット間で生じる部分放電が1次ストリマの進展に寄与していることも明らかにした。この研究成果は、今まで実験的に確認されてきた触媒の種類による反応活性の違いを解明する上で極めて重要な学術的情報が提供できると共に、今後の触媒の改良及び高度設計に有効に活用できるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、大気圧放電プラズマと触媒の複合技術を利用した反応活性と選択性に優れた革新的低温化学反応技術の確立を目指している。研究目標を達成するために必要とされる要素技術としては、「低温プラズマとの複合に適した新規材料の開発」、「モデル反応などによる新規触媒の評価技術とシナジー効果発現に必要な条件の確立」、「メカニズム解明」など綜合的な評価が必要である。 今年度の研究では、低温プラズマと触媒の複合化における基礎的な条件を提案すると同時に、両者の時間スケールを比較することで、今後の研究開発における検討課題を明瞭に示すことができた。また、触媒表面で進展するサーフェスストリマのナノ秒観察に初めて成功し、この研究分野における共通となる基礎的な知見を発信できた。特に、触媒表面上のプラズマ進展の速度、1次及び2次ストリマの詳細な進展速度、印加電圧及び触媒量の依存税などについて詳細な情報を得ることができた。また、サーフェス1次ストリマの進展過程において触媒ペレット間で生じる部分放電が中間起点となり、ストリマの進展を促進していることも明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度では、これまでの研究成果をベースに、低温プラズマと触媒の複合条件の最適化と、それに必要な材料の探索をつつける予定である。特に、昨年度計測に成功した触媒表面におけるサーフェスストリマの計測を、触媒の表面状態(比表面積、細孔のサイズ、空隙率など)、触媒ペレットのサイズおよび形状、担持金属の種類およびその担持量の影響などについてより詳細な評価を行い、当初目標としていたプラズマー触媒技術のフラットフォーム技術の確立に資する基礎的データを収集する予定である。 上記の基礎的な評価を行うために、各種単体にナノサイズ活性金属を担持した触媒サンプルを制作し、放電プラズマの進展特性と反応活性の相関関係を明らかにする。特に、担持触媒の活性金属の酸化還元状態が反応活性に与える影響と、表面上のストリマの進展に与える効果を比較検討することにより、H27年度に得られた知見の検証と、より広い条件に対する検討を行う予定である。具体的には、触媒の雰囲気ガスをコントロールした環境下でプラズマを形成し、分光測定などによる活性種の計測、電圧電流波形による診断、そしてプラズマの進展の様子を総合的に調べる予定である。モデル反応としては、ベンゼンやトルエンなどのVOCの分解、そしてVOCの分解過程で生成されるギ酸やCOなどの中間生成物の高度酸化反応を用い、触媒の活性評価を行う。特に、従来の触媒が機能しない動作温度100℃以下で高活性を示す触媒開発を進めると共に、相乗効果の発現メカニズムを明らかにする予定である。これらの研究を通して基礎的な情報が構築できれば、プラズマ触媒反応器の設計と高度化に必要な触媒のスグリニングおよび反応条件の設定などに有効活用できるため、今後プラズマ触媒を用いた産業応用に大きく貢献できると考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定した価額より安く購入できたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の物品調達に有効に使用する。
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