2016 Fiscal Year Research-status Report
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26410010
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
梅本 宏信 静岡大学, 工学部, 教授 (80167288)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジボラン / ホウ素原子 / 触媒分解 / 不純物ドーピング / ボラザン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タングステン等の加熱金属触媒体上でのジボラン等の水素化合物の分解過程を実験と理論の両面から追及することを目的としている。以前の研究からシランやホスフィンは、原子にまでばらばらに分解されるのに対し、アンモニアではアミノラジカルと水素原子が主生成物であることが分かっている。今回は、ジボランの分解過程を通じ、水素化物の種類によって分解過程が大きく異なることの原因を探る。また、ジボラン以外のホウ素化合物についても実験を行い、特定高圧ガスに依らないホウ素原子ドーピングの可能性について追究する。 平成27年度の研究により爆発性や毒性がなく安全なボラザン(ボラン-アンモニア錯体)が特定高圧ガスであるジボランに替わる安全なホウ素原子のソースとなりうることが判明した。それと同時に、ボラザンによって一旦タングステンワイヤをホウ素化し、その後ボラザンの供給を絶って、水素気流中でホウ素化されたワイヤを加熱することでホウ素原子を供給できることを見出した。平成28年度は、この研究をさらに発展させ、定量的な解析まで行った。その結果、表面ドーピングにおいて十分な量のホウ素原子が安定的に得られること、水素添加によりホウ素原子濃度が上昇すること、ワイヤ温度に対するホウ素原子発生の活性化エネルギーは水素の添加で小さくなることなどを見出した。これは、ワイヤ表面から直接のホウ素原子放出はむしろ少なく、ボラン等の非ラジカル種がまず放出されて、その後に気相中で水素原子との反応によってホウ素原子が生成していることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、特定高圧ガスや毒劇物ではないボラザン(ボラン-アンモニア錯体)と水素の混合ガスを用いて、一旦タングステンワイヤをホウ素化し、その後、純水素中でワイヤを加熱することでホウ素原子が安定的に放出されることを見出した。この手法を用いることで、安全、かつ窒素混入の心配なしにホウ素を半導体基板表面にドーピングすることが可能となる。具体的には、60分間タングステンワイヤをホウ素化することで、4時間以上に渡って安定的に10^11 cm^-3の桁の濃度のホウ素原子が得られることが分かった。このホウ素原子濃度は、表面ドーピングに関しては十分な値である。また、タングステンのほかタンタルやモリブデンワイヤも試したが、タングステンがもっとも放出が安定していた。ホウ素原子濃度は水素添加によって増加し、ワイヤ温度に対してはアレニウス型の依存を示した。水素無添加時の活性化エネルギーは水素添加時の値よりも2倍近く大きかった。水素無添加時の活性化エネルギーはタングステン表面からのホウ素原子離脱のエネルギーと考えられる。一方、水素添加時の低い活性化エネルギーは放出される種がホウ素原子ではなく、ボランのような非ラジカル種であることを示唆する。アンモニアや窒素分子の触媒分解では、タングステンの窒化は起こらない。これは、本手法において、窒素原子や窒素化合物の発生は抑止できることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によりボラザン(ボラン-アンモニア錯体)・水素混合ガスを用いて、安全、かつ窒素混入の心配なしにホウ素を半導体基板表面にドーピングすることが可能であることが示された。ただし、ボラザンは固体粉末であるため、真空チャンバー内での扱いがやや面倒であるという問題点もある。平成29年度は、研究期間の延長が認められたので、これまでのノウハウを活かして単体のホウ素によるタングステンワイヤのホウ素化とホウ素化されたワイヤからのホウ素の放出過程を研究課題としてみたい。単体ホウ素であれば粒状の市販品がある。これまでの研究から固体のホウ素は水素原子とは反応しないことが分かっている。一方、ホウ素は2100 ℃で1 Paの蒸気圧がある。通常ワイヤはこの程度の温度までは加熱するので、ワイヤ自身の熱でホウ素を昇華させ、さらにワイヤのホウ素化まで行うことができる可能性は大きい。ホウ素化されたワイヤからのホウ素原子の放出はこれまで同様にレーザー誘起蛍光法によって行うことができる。
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Research Products
(7 results)