2016 Fiscal Year Research-status Report
キャビティーリングダウンを用いた新規ラジカル分子錯体の分光検出
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26410019
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
須磨 航介 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (10506728)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CRDS / ラジカル / 高分解能分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度研究ではCRDSミラー反射率が実験中にすぐに低下し、安定したスペクトル探査を行うことが難しく課題遂行が大幅に遅れた。ミラーの洗浄、真空ポンプのオイル交換等を行ってもほぼ効果がなかったが、チェンバー内を洗浄したところようやく反射率低下を抑えることができた。チェンバー内に放電で生成したすすが蓄積し、ポンプの起動と同時にすすがミラーに付着し反射率が低下していたと考えられる。また、これまでの研究で、従来の実験条件では生成量の少ないラジカル錯体の検出は困難であることが明らかになったため、実験装置及び条件の抜本的な改良を行った。新規レーザーの導入により光源の質が大幅に改善したこと、ミラーの反射率低下が抑えられたことで、リングダウン時間は反射率で期待される値まで改善した。このことにより、ノイズが大幅に改善し、放電時でも0.5ppm/pass程度(20回積算)にまで抑えられた。また、レーザーのスキャンと測定プログラムが完全同期するようシステムを作り直すことで、信号強度のロスや波長校正時の無理なフィッティングが解消された。また、新規にタイミングジェネレーターを導入し、タイミングの設定時の制限を完全に排除した。まだ必ずしも最適な条件を出せていない可能性があるが、信号強度の大幅な改善が見られた。以上の改善のもと再度Ar-CN錯体の探査を行った。CNラジカルの遷移は以前に比べてかなりS/Nの改善がみられたものの、Ar錯体は検出されなかった。従来の探査ではノイズに埋もれて観測されていなかった信号強度の弱いラインが多く観測されたが、その帰属には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記したCRDS用のミラー反射率の問題でスペクトルの探査に遅れが生じた。しかし、その原因は完全に解明し、ミラー反射率で計算されるリングダウン時間が安定して得られるようになった。また、原因解明の作業に伴って行った装置・実験条件・測定プログラムの徹底的な改良により、ラジカル生成効率・装置感度・ノイズは著しく改善し、目的とする分子種探査に必要な環境をほぼ揃えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度研究で行った実験装置等の改良によるS/Nの大幅な改善により、生成量の少ないラジカル錯体の検出の可能性が高まった。これまでの研究に引き続きH2O-CN錯体のものと考えられるスペクトルの同定を目指す。また、大気化学で重要な役割を果たす可能性がある安定分子種を含む錯体についても探査を行う。特にO2やN2を含む錯体の検出を試みる。得られた実験データと理論計算の結果を組み合わせてラジカル錯体の電子励起状態における分子間相互作用について考察する。
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Causes of Carryover |
当初計画になかった新規レーザーの導入に関係する装置開発を行ったこと及びミラー反射率、真空関係のトラブル等により計画に遅れが生じたため、本格的な新規分子種探査とその理論研究に関係する予算を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規分子種探査及びその理論研究に必要な物品を調達する。残額は成果発表に必要な学会旅費・論文の掲載及び準備に使用する。
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