2014 Fiscal Year Research-status Report
量子モンテカルロ法の発展・深化による陽電子吸着分子に対する同位体効果の理論的解析
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26410020
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
北 幸海 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (40453047)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 陽電子 / 陽電子親和力 / 振動励起 / H/D同位体効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が開発に成功した理論手法をさらに発展・深化させ、同位体分子種の振動励起状態への陽電子吸着に対する高精度理論手法を開発・実装することで、陽電子吸着に対するH/D同位体効果の発現機構を世界に先駆けて明らかにすることを目的に研究を実施している。H26年度は申請時の研究計画に基づき、以下の研究項目(1A)、(1B)を実施した。 (1A)振動量子モンテカルロ法の多配置理論への拡張 振動励起状態への陽電子吸着に対するH/D同位体効果を計算化学的に議論するためには、水素核と重水素核の量子力学的な揺らぎの違いを精密に考慮できる高精度非調和振動解析の実現が必要不可欠である。そのために、申請者が既に開発した単配置理論としての振動状態理論を多配置理論へと拡張した。これにより、例えば水分子とその同位体(H20, HOD, D2O)の振動励起エネルギーを、実験値との平均絶対誤差2cm-1で算定することに成功している。 (1B) 多次元離散データ補間法の高速化・高効率化法の構築 量子力学的揺らぎが異なるH体・D体に対して分光学的精度 (cm-1) の振動解析を実現し、かつ陽電子親和力に対する同位体効果を実験測定精度(meV)で算出するためには、振動モード間のカップリングを考慮した多次元非調和ポテンシャルエネルギー曲面、および多次元陽電子親和力曲面を精密かつ高速に計算する必要がある。そのために、申請者はこれまでに開発した多次元離散データ補間法を元に、高次元離散データを低次元の部分空間へ分割した数値補間法を開発した。これにより、比較的大きな分子系に対しても精度を保ちつつ高速・高効率な計算が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は申請時に記した研究計画通り、(1A)振動量子モンテカルロ法の多配置理論への拡張、および(1B) 多次元離散データ補間法の高速化・高効率化法の構築を実施した。概ね想定内の研究成果がの得られていることから、自己評価として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、申請時の研究計画の通り、H26年度からの継続課題である「(1A)振動量子モンテカルロ法の多配置理論への拡張」、および「(1B) 多次元離散データ補間法の高速化・高効率化法の構築」を実施するとともに、これら開発した手法を用いて「(2A) 陽電子親和力のH/D同位体効果の系統的解析」に着手する。これは様々な分子群に対する系統的解析を実施することで、H/D同位体効果に関する基礎的データを収集することが目的である。 H27年度は、まず最も単純なニトリル化合物であるシアン化水素、およびカルボニル化合物であるホルムアルデヒド分子に対するH/D同位体効果を解析する予定である。H27後半からは実験的にH/D同位体シフトが観測されているアセトニトリル分子の解析に着手したいと考えている。また、この段階で得られた結果を研究項目(1A), (1B)へフィードバックすることで、信頼性と精度を損なうことなく理論手法の洗錬化を図る予定である。
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Causes of Carryover |
H26年度に購入したワークステーションの購入価格が当初計上していた金額を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度の物品費・旅費・謝金に上乗せして使用する。
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