2015 Fiscal Year Research-status Report
量子モンテカルロ法の発展・深化による陽電子吸着分子に対する同位体効果の理論的解析
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26410020
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
北 幸海 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (40453047)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 陽電子 / 陽電子親和力 / 振動励起 / H/D同位体効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が開発に成功した理論手法をさらに発展・深化させ、同位体分子種の振動励起状態への陽電子吸着に対する高精度理論手法を開発・実装することで、陽電子吸着に対するH/D同位体効果の発現機構を世界に先駆けて明らかにすることを目的に研究を実施している。H27年度は申請時の研究計画に基づき、H26年度からの継続項目(1) 振動励起状態への陽電子吸着に対する高精度理論手法の発展・深化、およ研究項目(2A), (2B)を実施した。 具体的な成果として、H27年度は本研究で開発した理論手法を用いて、最も単純なニトリル化合物であるシアン化水素分子、重水素置換体、そして三重水素置換体に対して、振動励起状態における陽電子親和力の系統的解析を実施した。現時点では虚時間発展を伴わない変分モンテカルロ計算による予備計算レベルの結果ではあるものの、(a)シアン化水素分子は陽電子親和力に関して主に負のH/D(T)同位体効果を持つ、(b)その効果はCH伸縮振動の励起状態において最も強く発現する、そして(c)その発現機構は主に振動励起状態における永久双極子モーメントの低下に起因することを見出している。さらに、最も単純なアルデヒド化合物であるホルムアルデヒド分子に対して同様の解析も実施し、(d)ホルムアルデヒド分子は陽電子親和力に関して正のH/D(T)同位体効果を持つ、(e)その同位体効果はC=O伸縮振動において最も強く発現する、そして(f)その発現機構は主に振動励起状態における双極子分極率の増大に起因することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度は、H26年度からの継続項目「(1)振動励起状態への陽電子吸着に対する高精度理論手法の発展・深化」、および「(2A) 陽電子親和力のH/D同位体効果の系統的解析」、「(2B) 陽電子吸着に対するH/D同位体効果の体系化」を実施した。その結果、陽電子親和力に対する同位体効果は分子毎に発現機構が異なっており、その発現機構を体系化する上で最も重要な説明因子を抽出することに成功している。したがって、自己評価として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、申請時の研究計画の通り、H27年度からの継続課題である「(2A) 陽電子親和力のH/D同位体効果の系統的解析」、「(2B) 陽電子吸着に対するH/D同位体効果の体系化」を実施する。解析中のシアン化水素・ホルムアルデヒド分子以外に対象分子を拡張することで、H/D同位体効果に関する基礎的データを収集するとともに、振動励起状態におけるこれらの分子特性と陽電子親和力との相関関係の詳細を明らかにすることで、H/D同位体効果の発現機構の体系化を図る。
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Causes of Carryover |
H26年度の繰越金をH27年度に消耗品代として使用したが、当初計上より利用金額が下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の物品費・旅費・謝金に上乗せして使用する。
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