2015 Fiscal Year Research-status Report
高周波ESRによる光合成水分解-酸素発生過程の構造研究
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26410021
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
松岡 秀人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 客員准教授 (90414002)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光合成 / 電子スピン共鳴 / 高周波ESR / 水分解酸素発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成反応機構の分子レベルでの解明は、太陽エネルギーの観点からも、近年ますます注目を集めている。本研究では、光化学反応における常磁性中間体に対し、その電子・分子構造を明らかにする上で最も有効な研究手法のひとつである電子スピン共鳴分光法(ESR)を適用し、光合成において最も重要な水分解-酸素発生過程を選択的に観測することを目的としている。本研究ではまず、国内で唯一の高時間分解高周波パルスESR装置を用いて、水分解-酸素発生を直接触媒するMnクラスターの測定を行った。共同研究者らの結晶構造解析から、Mnクラスターの構造と活性にはカルシウムイオンの存在が重要であることがわかっている。本研究では、カルシウムイオンを含むネイティブな系に加えて、ストロンチウムに置換した系のESR計測も行った。ストロンチウムに置換することで、電子・分子構造を反映するESRパラメータの変化をスペクトルシミュレーションから明らかにした。 一般に光合成のESR研究は低温(凍結溶液中)で行われる。しかし、低温と常温では、分子配向やダイナミクスに差があることはよく知られている。本研究では、常温での時間分解測定を可能とするため、スピンラベル化した酵素系をモデル化合物として用い、常温での時間分解ESR測定法の確立も行っている。モデル化合物に対しては、すでに常温・水溶液中で自由誘導減衰(FID)の観測にも成功し、高効率での光照射法の確立を現在行っている。、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水分解-酸素発生を直接触媒するMnクラスターに含まれるカルシウムイオンを置換し、酸素発生能を変化させた系に対しても、S2酸化状態を選択的に捕捉し、ESRによる観測に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
測定されたデータを、共同研究者らの最新の結晶構造データならびに、量子化学計算と併せて解析を行う。また、限りなく常温に近い状態での光合成のESR観測を目指して、装置の改良ならびにモデル化合物の改良を行っていく。
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Causes of Carryover |
ヘリウム液化機の故障により液体ヘリウムの使用量が当初予定を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、当初予定よりも液体ヘリウムの使用量が増えると見込まれるので、それに充当する。
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Research Products
(7 results)