2015 Fiscal Year Research-status Report
タンデムトラップを用いる液滴からの多成分単一粒子触媒の合成と反応性評価
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26410024
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
河野 淳也 学習院大学, 理学部, 教授 (90557753)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イオントラップ / 液滴混合 / ラマン分光法 / サーモグラフィー / 触媒評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,安価で入手の容易な物質を組み合わせて高性能触媒を作り出すことである。このため,多成分の金属を含む酸化物担持触媒の単一粒子の合成と反応性評価を,触媒組成を変化させながら行う。具体的には,混合トラップ,反応トラップからなるタンデムイオントラップ装置を開発し,混合トラップで液滴混合によって単一粒子触媒を合成し,反応トラップに搬送した後に反応気体下の加熱と温度測定を行う。 平成27年度は,液滴混合トラップと反応トラップの接合と粒子のトラップ間搬送,およびラマン分光法の適用による液滴混合の確認を行った。液滴混合トラップに粒子をトラップし,エンドキャップ電極に3kVの高電圧パルスを印可することによって反応トラップへ搬送した。このとき,高電圧パルスの印可時間が50 ms以上必要であることがわかった。高電圧パルスについては,高電圧アンプを購入して自作した電源によって発生させた。トラップした液滴および微粒子はCCDカメラによる顕微観測を行っているが,液滴が混合したかどうかは画像観測のみでは判断できない。そのため,トラップ粒子の電荷測定とラマンスペクトル測定を行った。トラップ粒子の荷電測定では,エンドキャップ電極間に直流の電圧を印可し,トラップ粒子の変位から電荷量を見積もった。混合前の液滴の電荷を合わせた電荷が混合後の液滴から観測されたため,液滴の混合が確認できた。一方,より直接的な確認として,混合液滴から生成した粒子のラマンスペクトルの測定を行った。硫酸ナトリウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液の液滴から生成した粒子をトラップし,ラマンスペクトルを観測した。混合前の液滴から生成した粒子からはそれぞれ硫酸イオンおよび炭酸イオンの信号が得られ,混合液滴から生成した粒子からはその双方が観測された。このことから,液滴の混合が進行していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標であった液滴混合トラップと反応トラップの接合と粒子のトラップ間搬送,およびラマン分光法の適用による液滴混合の確認が実現できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
触媒微粒子を液滴混合トラップで生成させ,反応トラップに搬送する。反応トラップにおいて反応気体(COとO2の混合気体)中で触媒微粒子にCO2レーザーを照射し,微粒子の温度を計測する。具体的には以下の項目を進める。(1) 液滴混合トラップによる触媒粒子調製:触媒活性を持つ粒子を液滴混合トラップ中に合成する。具体的にはTiO2担持Au触媒の合成を目指す。(2) 液滴混合トラップから反応トラップへの微粒子の搬送:液滴混合トラップから反応トラップへと触媒微粒子を搬送する。(3) 開発装置による反応性評価:反応トラップ内でCO2レーザーによる触媒粒子を反応気体存在下で加熱する。サーモグラフィーカメラによる反応熱測定により反応性を評価する。液滴混合トラップで,単体であるTiO2の量が一定で,触媒本体であるAu濃度の異なる微粒子を作成する。その微粒子の反応性が,Auの量の増加によって増加することを確かめる。(4) 触媒金属塑性の網羅的探索:触媒微粒子にさまざまな金属元素を導入し,元素組成と触媒性能との関係を網羅的に明らかにする。その結果として,高い反応性を持つ触媒を作り出す。
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Causes of Carryover |
反応気体導入装置の導入するためのマスフローコントローラの価格が高かった。その購入資金に充当するため,次年度使用が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マスフローコントローラおよび触媒原料試薬などの消耗品の購入に使用する予定である。
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