2015 Fiscal Year Research-status Report
分子システムを対象とした電子励起状態理論の開発と光合成系の電子メカニズムの解明
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26410026
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
福田 良一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (40397592)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子状態理論 / 励起状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.縮環イミダゾリウム色素の電荷移動型励起状態に対する溶媒環境の効果 縮環π電子系イミダゾリウム化合物の分子構造や電子状態と蛍光スペクトル及びその溶媒依存性との関連を明らかにした。高配位ヘテロ元素を含むπ電子化合物は、π電子系の大きさ及びヘテロ元素の種類や配位数といった複数の調整可能なパラメータを含むため、光機能分子を柔軟に設計できる。一方で、こうした分子構造パラメータと光機能の相関は直感的には理解できず、高精度な量子化学計算が必要になる。縮環π電子系イミダゾリウム化合物の分子構造や電子状態と蛍光スペクトル及びその溶媒依存性との関連を、SAC-CI計算により明らかにした。アミノ置換イミダゾリウム色素では、芳香環がなす二面角が励起状態で基底状態よりもかなり大きくなることが分かり、ねじれ型分子構造により誘起される電荷移動の寄与が示唆される結果を得た。 2.ヘテロ環状色素の電子移動と光化学 クマリン系の色素と溶媒分子間の励起状態での電子移動およびプロトン移動反応のメカニズムをSAC-CI計算により明らかにした。励起状態での光誘起プロトン移動反応は、2重井戸型ポテンシャル面上の反応であり、励起状態の精緻なポテンシャル面の計算が要求される。また、電荷移動を伴うため溶媒効果が重要となる。典型的な例として、クマリン系誘導体とメチルイミダゾールの反応を取り上げ、前年度から開発している手法により量子化学計算を行った。結果として、トルエン中で反応障壁約2kcal/molの2重井戸型ポテンシャルを得た。励起状態でのプロトン・電子移動は光エネルギー変換において重要な過程であり、理論計算でその詳細な仕組みが予測できたことは、光合成系のメカニズムの理解や人工光合成系の設計に資する成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、光合成に関連したクルロフィル色素集合体における、励起状態での電子移動とエネルギー移動を研究対象とする計画であった。しかしながら、現状の進捗状況は、計画よりもやや小さな系であるクマリン‐イミダゾールの系の計算にとどまっている。本年度の成果も、光合成の基礎的なメカニズムを明らかにするうえでの重要なステップであるが、実際のクルロフィルの計算には至らなかったため、進捗状況をやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
クルロフィル色素集合体でも同様な計算は可能であり、これまで通り進める。ただし、本年度の結果から計算機資源の詳細な見積もりが可能となったため、それに基づきモデルの大きさを多少変更する。
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Causes of Carryover |
専用の計算機を購入する予定であったが、予備計算による計算機資源の見積もりに予想以上に時間がかかった事。さらに、所属機関を移動することが決まったため、移動後に購入する方が移設に要する費用の面及び計算の継続のためにも合理的であると判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
所属機関の移動後、速やかに予定の専用計算機を購入する。
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Research Products
(16 results)