2016 Fiscal Year Research-status Report
分子システムを対象とした電子励起状態理論の開発と光合成系の電子メカニズムの解明
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26410026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福田 良一 京都大学, 実験と理論計算科学のインタープレイによる触媒・電池の元素戦略研究拠点ユニット, 特定准教授 (40397592)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子化学 / 計算化学 / 励起状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子励起状態における光化学反応やエネルギー移動と光電子移動が競合する系において、それぞれの過程の進行を、簡便なモデルを用いたSAC-CI法による量子化学計算に基づいて予測する方法を提案した。具体例として、光化学的なヒドロキシラジカル前駆体として知られているN-hydroxypyridine-2(1H)-thione (N-HPT)において光化学的なOHラジカル解離反応と光イオン化反応が競合する事を、PCM SAC-CI法による量子化学計算で明らかにした。光化学反応としては、最低エネルギーのπ*状態に励起された分子が、OH解離の反応座標に沿った、π*とσ*状態間での円錐交差を経て、解離型のポテンシャルエネルギー面に移行する。さらに基底状態との円錐交差を経て、ラジカル型の解離生成物へと反応が進行することを見出した。また、水溶液中での光イオン化の閾値が3.45 eVと見積もられた。この値は、π*励起エネルギー3.38 eVと非常に近接している。中性条件においては可視‐近紫外光の照射により、光解離とイオン化反応が競合しうることが示された。この計算手法は、溶液中や凝集相における多くの光化学に応用可能である。 また、励起状態のポテンシャルエネルギー面の計算結果を、様々な密度汎関数による時間依存密度汎関数法をSAC-CI法の比較により検証した。励起状態におけるプロトン移動反応(ESPT)をターゲットとした。時間依存密度汎関数法を用いた場合、ESPTのポテンシャルエネルギー面は汎関数依存性が非常に大きく、溶媒効果と電子状態両方の適切な記述が、実験結果を再現するためには重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、光合成に関連したクロロフィル色素集合体における、励起状態での電子移動とエネルギー移動を研究対象とする予定であった。しかしながら、現状の計算対象は、計画より小さな系にとどまっている。本年度は、研究代表者の勤務先が変わり、それに伴う、研究実施場所の変更や教育及びその他業務の増加があったため、研究計画の遂行に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果をスケールアップする事は可能であり、これまでの計画に基づいてクロロフィル色素集合体の研究を行う。
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Causes of Carryover |
専用の計算機を購入する予定であったが、本年度途中で、研究代表者の勤務先が変わり、それに伴い研究実施場所の変更があった。移動先では、計算機用の電源を先に確保する必要が生じ、そのための措置を優先させたため本年度の購入に至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
電源を確保できる目途が着いたため、速やかに予定の専用計算機を購入する。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] 光解離とイオン化の競合2016
Author(s)
福田良一、江原正博
Organizer
第10回分子科学討論会
Place of Presentation
神戸ファッションマート (兵庫県、神戸市)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-15