2015 Fiscal Year Research-status Report
局所的に発現するナノ構造の強い光学活性の実態解明と物質系との相互作用への展開
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26410027
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
成島 哲也 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (50447314)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キラリティ / 光学活性 / 金属ナノ構造体 / 近接場光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ナノ構造体が発現する光学活性の機構と特性を,微視的なレベルから明らかにするものである。ナノスケールの分解能を有した独自の光学活性検出法を用い,ナノ構造体のどのような形状,そして構造内部のどこの部位が光学活性の発現に寄与するのかを解明する。さらに光学活性の起源となるナノ空間の局所光電場の特性と構造を既知とすることにより,この局所光電場を利用した検出や励起への応用も期待される。平成27年度に行った研究の概要を以下に記す。 円環の一部分(円弧)に相当する形状を基本構造として設定し,全体の形状の対称性,局所的な対称性の比較を行った。例えば,この円弧構造を2次元面内で複数接続することにより直鎖状の波型ナノ構造体を構成し,その構造体内部の局所光学活性の空間分布の特徴を電磁気学計算及び近接場円二色(CD)性測定により調べた。電磁気学計算によると,円弧構造同志の接続部位(変曲点を形成し,局所的にキラルな構造を持つ)において,そのキラリティに応じて正または負の局所的な光学活性が生じることが予想された。全体としてキラルな構造体(変曲点が奇数個)では構造の中心に関して対称な局所光学活性の分布を,アキラルな構造体(変曲点が偶数個)では反対称な分布を示した。実際に作製された複合ナノ構造体の近接場CD測定においても,光学活性は構造全体のキラリティを反映して対称または反対称に分布していた。また,変曲点の掌性により局所的な光学活性の符号が規定されるという特徴についても,実験的に確認された。これらの結果から,局所光学活性は,主に構造の変曲点によって支配され,その総和が全体としての光学活性として観察されるという知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究により当初の研究目的である,ナノ構造体により発現する光学活性の制御や,光学活性を規定する因子の抽出が,限定された条件においては実現されつつある。また,その起源・機構の理解や特性の把握についてはまだ十分ではないが,継続して検討を進める。高い信頼性で光学活性測定を行うための測定系を併行して準備してきたが,これについてはほぼ完了した。その一方で,発現した光学活性領域周辺の光電場や偏光の状態についての測定・解析については,実験装置の準備にしか着手できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,発現した光学活性領域周辺の光電場や偏光の状態についての測定・解析を進める。また,新奇に構築した測定系を近接場測定に対応できるようにし,ナノスケールでの観察を実現する。また,光学活性領域周辺のねじれた光局在電場を利用した物質系との相互作用への展開についても,マイクロ流路などを準備し,早急に進める必要がある。
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Causes of Carryover |
3月31日時点での支払額で報告しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は実質108円の残額でほぼ全て執行済のため,特に今後の使用計画に変更は生じない。
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