2014 Fiscal Year Research-status Report
水分子によって構成されるかご型ナノ空孔を有する物質の構造相転移
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26410032
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹谷 敏 独立行政法人産業技術総合研究所, 物質計測標準研究部門, 主任研究員 (40357421)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クラスレートハイドレート / 結晶構造 / 包接化合物 / 位相コントラストX線イメージング / 密度解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
低温型位相コントラストX 線イメージング測定を実施し、テトラヒドロフラン(THF)ハイドレート結晶試料の内部観察を実施、THFハイドレート部分、未反応で残された水(液体)、および水が凍結して氷になった部分等を識別し、THFハイドレート部分の密度解析を可能にした。同一手法のその場観察により、ハイドレートと水と氷とのその場観察を可能にした、世界初の結果である。また、測定中の冷熱排気に伴うX 線光学系の温度ドリフト軽減によるX線測定時間も2時間程度までの長時間測定が可能となり、従来のX 線露光時間4 倍の実施が可能となった。これにより、今までよりも一桁高い密度精度での測定が可能となり、理論的には例えばメタン分子のケージ占有率換算で、およそ10%の高精度での密度評価が期待される。 アルコールとメタンとを含むガスハイドレートに関し、結晶が安定な氷点下温度(~-180℃)の低温粉末X 線回折測定を行うことにより、ガスハイドレート試料の結晶構造の解析を実施した。直接空間法による非経験な粉末X線構造解析により、ゲスト分子に関する初期情報なしで、ガスハイドレートの粉末X 線構造解析が可能で、粉末X 線回折による精密構造解析を実施し、各ゲスト分子のガスハイドレート中のケージ占有率、ケージ中のゲスト分子の平均分布位置を求めることができた。 今後、位相コントラストX線イメージング測定で求まるケージ占有率を用いることで、より正確にゲスト分子の平均分布位置の評価が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、低温型位相コントラストX 線イメージング測定に関し、測定中の冷熱排気に伴うX 線光学系の温度ドリフト軽減により、X線測定時間も2時間程度までの長時間測定が可能となり、従来のX 線露光時間4 倍の実施が可能となった。また、測定中の温度制御の精度も誤差1Kと非常に安定するように改良でき、温度変化に伴う密度変化の誤差を減らすことに成功した。これらの開発に成功したことにより、X線イメージング測定による密度解析の精度が格段に向上した。 粉末X線構造解析によるガスハイドレートの新規構造解析に成功し、温度変化に伴う結晶構造相転移の情報を有効に活用し、また、直接空間法による非経験な粉末X線構造解析を行うことにより、各ゲスト分子のガスハイドレート中のケージ占有率、ケージ中のゲスト分子の平均分布位置を求める方法論が確立されつつある。 これらの研究の成果の一部は平成26年度中に学会発表した。引き続き解析を進め、論文誌に発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定に従い、平成26年度に確立する測定手法をもとに、各種のガスハイドレート試料の測定を実施する。また、精密構造解析と低温型位相コントラストX 線イメージング測定の両者の測定・解析により得られるガスハイドレートの密度を比較することにより、求められたガスハイドレートの結晶構造およびケージ占有率を評価する。さらに、ケージ内でのゲスト分子の分布状態と結晶構造の安定性やケージ占有率との関係について、考察する。 粉末X 線構造解析により明らかにされた結果をもとに、DFT 計算などの計算機実験で、より詳細にガスハイドレート結晶内でのゲスト分子の状態を検討するとともに、ケージ構造との相関を相対的に評価していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に実施予定であった粉末X線回折装置用冷ガス吹付装置改良に関し、一部試料に関し、既設の装置の温度範囲(-180℃<)での相転移現象も見られ、まずはこの温度範囲での詳細な測定を優先させた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に、当初の予定に従って、粉末X線回折装置用冷ガス吹付装置改良を実施予定である。装置改良自体の時期としては、当初の計画よりも若干の遅れはあるものの、研究自体は順調に進んでいる。
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