2014 Fiscal Year Research-status Report
高周期14族元素カチオン種の発生と小分子活性化に基づく複素環化合物の創製
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26410035
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
川島 隆幸 群馬大学, 大学院理工学府, 客員教授 (80011766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有井 秀和 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (80384733)
海野 雅史 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20251126)
箕浦 真生 立教大学, 理学部, 教授 (30274046)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ベンジルジメチルシラン / ヒドリド引き抜き反応 / シリルカチオン錯体 / 1,2-ジヒドロ-2-シラナフタレン / アルケニルカルボカチオン / 分子内求電子置換反応 / 含ケイ素環状化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
基質として、4,4’-ジ-t-ブチル-3-ジフェニルシリルビフェニルを用い、二酸化炭素存在下、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを作用させ、ヒドリド引き抜きによりシリルカチオンを発生させたが、期待した反応は起こらず、生じたシリルカチオンの不均化や置換基の脱離などの副反応が進行することが分かった。そこで、より不均化し難いと思われるアルキル置換シランとして、ベンジルジメチルシランを基質とし、多重結合化合物としてトリメチルシリルアセチレン、フェニルアセチレンおよび1-ヘキシンなどのアルキン類を、塩基として2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルピリジンの存在下反応させたところ、目的の反応が進行し、置換位置が異なる1,2-ジヒドロ-2-シラナフタレン誘導体がそれぞれ73%,34%,38%の収率で得られた。スペクトル解析およびフェニルアセチレンからの生成物のX-線結晶構造解析により生成物の置換位置を決定し、位置選択性はアルキン中のシリル基の有無によることを明らかにした。すなわち、トリメチルシリルアセチレンの場合は、介在するカルボカチオンのカチオン中心ヘのβ―シリル効果により、3-置換体となるのに対して、シリル基がない場合は、第2級カルボカチオン生成が優先し、4-置換体となることが分かった。また、ケイ素上の置換基効果を調ベるため、基質としてベンジルジイソプロピルシランを用いたところ、Thorpe-Ingold効果により収率は71%,67%,66%と向上した。さらに、ベンジルジイソプロピルシランを用いた場合には、二酸化酸素との反応で、目的の4,4-ジイソプロピル-3,4-ジヒドロ-4-シライソクマリンが得られた。ナフチルおよびアントリルシラン誘導体を基質とする反応については、対応するシリルカチオン錯体における不均化等が予想されたので、検討は保留した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた基質を用いた反応では、ヒドリド引き抜きにより生じたシリルカチオンの不均化および置換基の脱離などの副反応が起こり、目的の含ケイ素環状化合物が得られなかった。しかしながら、基質として計画に含まれていた、アルキルヒドロシランであるベンジルジメチルシランを用い、多重結合としてアルキンを検討したところ、目的の含ケイ素環状化合物である、1,2-ジヒドロ-2-シラナフタレン誘導体の合成に成功した。さらに、ケイ素上の置換基をメチル基からかさ高いイソプロピル基に換えたところ、収率の向上が認められた。また、この基質を用いると、二酸化炭素の活性化にも成功し、3,4-ジヒドロ-4-シラクマリン誘導体が得られた。基質として、ナフチルおよびアントリルシランは上述の不均化などを起こす可能性があることから検討を保留した。以上のように研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
基質としてベンジルジメチルシランおよびベンジルジイソプロピルシランを用いアルキンとの反応により目的の含ケイ素環状化合物である1,2-ジヒドロ-2-シラナフタレン誘導体が得られることがわかった。そこで27年度の計画においてまず、アルキンに換えて、アルケンとの反応を行い、1,2,3,4-テトラヒドロ-2-シラナフタレン誘導体が生じるかどうかを検討する。シス-およびトランス-アルケンを用いて、反応の立体化学を明らかにする。また、アルキンとの分子間反応に成功したので、分子内アルキンとの反応も十分達成可能と考えられる。そこで、2位にアルキニル基を有するフェニルシランを用い、ベンゾシロール誘導体が合成できるかを検討する。この反応に関しては、ヒドリド引き抜き剤が触媒量で進行する可能性があるので、その点についても検討する。ケイ素化合物を用いて成功した反応をゲルマニウム類縁体に拡張することは十分可能であると思われるので、28年度の研究計画に組み入れた。なお、保留した基質については、研究全体の進行状況により検討するかどうか判断する。
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Causes of Carryover |
本年度の実験計画を遂行するための試薬・ガラス器具は十分で、購入する必要がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の実験計画を遂行するための試薬購入に充てる。
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Research Products
(5 results)