2014 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属錯体を用いたオリゴシラン類の新規合成法の開発
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26410036
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
菅野 研一郎 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20360951)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オリゴシラン / ヒドロシラン / 遷移金属触媒 / 脱水素カップリング反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属触媒存在下でのヒドロジシランとアルコールとの反応では、ケイ素-ケイ素結合の切断が容易に起こり、アルコキシモノシラン類の混合物が得られることがよく知られている。これに対し本年度の研究では、適切な触媒と反応条件を設定することで、ケイ素-ケイ素結合の切断を伴わずにヒドロシラン部位をアルコキシ化することに成功した。 ヒドロジシランとメタノールとの反応において種々の金属触媒、および反応条件を検討した結果、(p-シメン)ジクロロルテニウム二量体がもっともよい結果を与えた。パラジウム、白金などの金属触媒では、ケイ素-ケイ素結合の切断が優先して進行し、目的物は得られなかった。また、 (p-シメン)ジクロロルテニウム二量体以外の他のルテニウム錯体では収率が低下した。また、用いる溶媒や反応温度も重要で、トルエン中0℃にて反応を行うのが最適であった。以上の最適化条件は、種々のアルコールにも適用することができた。量論反応を行ったところ、(p-シメン)クロロヒドリドジルテニウムとクロロジシランが生成した。この結果から、以上の結果から本反応は、(p-シメン)クロロヒドリドジルテニウムが触媒活性種であり、これにヒドロジシランのSi-H部位が配位したσ錯体が生じ、この錯体にアルコールが求核攻撃することで対応するアルコキシジシランが生じていると推測した。ヒドロシラン部位が酸化的付加を起こさずσ錯体でとどまっていることが、ケイ素-ケイ素結合を保持して反応が進行するために重要であると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、遷移金属触媒を用いてヒドロオリゴシランのヒドロシラン部位を、ケイ素-ケイ素結合を損なうことなく官能基変換することであったが、アルコールとの脱水素カップリング反応においてこれを見出すことに成功したことから、研究の遂行はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出したアルコールとの反応を一連のオリゴシランを用いて検討し、反応の適用範囲を探る。また、反応機構の解明のために、種々の条件における量論反応を行い、反応中間体の観測を試みる。さらに、見出した最適のルテニウム触媒の配位子を他のものに変え、より高効率な触媒の探索を行う。
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Causes of Carryover |
当初の予想では、目的の反応を見出すためには高価な貴金属試薬が必要であり、また様々な種類の高価な支持配位子を可能な限り反応に用いる必要があると思われていたが、実際には市販の安価な金属錯体が最適であることが比較的早い段階で明らかとなったため、当初の予想よりも購入した試薬の価格が安価となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度と同様に、主に消耗品費に研究費を用いる予定である。これは、本研究の性質上当然のことであるが、日々の実験に必要な金属試薬、有機化合物試薬、有機溶媒、ガラス器具などは、様々な種類のものがその時々の進捗状況によって必要となり、その都度購入しなくてはならないためである。また、研究成果の発表のための国内旅費にもその一部を使用する予定である。
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Research Products
(10 results)